ロマンを秘めた「性」の世界!岐阜の新名所
「岐阜浮世絵春画美術館」を訪れてみないか?
岐阜城を目の前に、その新たな名所は2023年11月4日にオープンした。
ただの美術館ではない。
飾ってあるのは浮世絵のみ、しかも春画だけを扱った美術館だ。
その名は「岐阜浮世絵春画美術館」
場所は、金華山を目の前にした岐阜市木挽町。
入場料はひとり1500円で、18歳以下の子供は入場ができない。
2000点を超えるコレクションから、館長の選りすぐりの作品が並ぶ。
春画は教科書だ。
春画の歴史は奈良時代まで遡る。
仏像や建築物に書かれていたのが、その原点とされており、しっかり書物として残されているのは平安時代。
性的欲求を満たすためのものと認識されていることもあるが、当時は嫁入り道具のひとつだった。
春画が広く知られることとなった江戸時代は、「結婚=子供を作る」と考えられており、特に身分が高い家の娘は、立派な春画を嫁入り道具として持たされていたのだ。
新婚生活を送るふたりの、いわば保健体育の教科書だった春画。
それらの作品は、有名な浮世絵師によって描かれ、発色のいい岩絵の具を使用して描かれているため、何百年経った今でも色鮮やかな作品だ。
その後は、家内安全や無病息災といったお守りとしても使用され、ご朱印帳や紙幣に貼られることもあったが、同時に性的欲求を満たす作品に変わっていったと言われている。
お祝いものとして、お正月には配られることもあった。
多くの作品が、人物だけでなく襖や縁側などの背景まで描いており、襖の柄と着物の柄を似せるなどファッション雑誌のような雰囲気だった。しかし、性的欲求を満たす作品になった頃から、そういった背景が省かれるようにもなっていったのも興味深い。
時に、その情景を説明するような言葉が書いてあったり、巻物の形をしていたり、表装が施されていたり、と工夫もされている。
春画は性風俗の記録でありながら、人間が子孫を残して存続していくための教科書だったのだ。
春画にはロマンがある。
今回、浮世絵春画美術館を開館した柴田正寛(しばたまさひろ)さんは、自身で2000点もの作品を収集してきた。
息遣いが聞こえてくるような乱れた髪の毛、感情が表れているような指先、情熱が灯る目線。
洞察力がなければ描けない、その細かい筆使いに心惹かれ、春画の収集を開始したという。
2000点全てを一度に展示することが出来ないため、作品はどんどん変わる。
作品のサイズにもよるが、常時70点ほどが展示され、何度訪れても楽しんでもらえるようにする、という意気込みだ。
あの有名な浮世絵師、葛飾北斎や喜多川歌麿も春画を描いたと言われており、春画の歴史は浮世絵の歴史とも言われる。
しかし幕府によって取り締まりが厳しくなったため、彼らは偽名を使って春画を広めることになったのだ。
そのため「絵のタッチや人物の表情の描き方が、あの有名な浮世絵師に似ている…」と思う作品も。
柴田さんは自身の収集品のなかにも、実はそんな作品が紛れ込んでいるかもしれないと思うと、「春画にはロマンがある」と感じるそうだ。
性を通して、生を知る
訪れることがなければ、知ることのなかった奥深い春画の世界。
ガラスショーケースの中に収まっている作品たちは、どれも当時の鮮度を保ったままで、その情景の真新しさを現代でも感じるほどだ。
全てを見せない奥ゆかしい作品もあるが、その細かな描写から溢れ出る興奮は、ショーケースを隔てた私たちにも感じさせる。
言葉を必要とせず、これほどまでに雰囲気を感じる作品が集まっているとは。
そんな謎の多い日本の春画が、再び岐阜から花開くことになるかもしれない。
ここは「岐阜で唯一」ではなく、「日本で唯一」の常設春画美術館なのだ。
性を通して、生を知る。
そんな命の文化を、ロマンを秘めた春画で学び、岐阜の新たな名所として、多くの人に足を運んでほしいものだ。
基本情報
岐阜県岐阜市木挽町29-1 ヒビノコーポラス1F
電話番号 058-214-7797
開館時間 10:00~16:00
毎週火曜日(火曜日が祭日の場合は開館)
入館料:1,500円
※18歳未満の方は入館できません
【アクセス】
岐阜バス:JR岐阜⑫番のりば・JR岐阜⑬番のりば・名鉄岐阜④番のりばから、行先番号に「N」が付いたバスで岐阜公園歴史博物館前 下車(※N11鶯谷高校口 行きは除く)
駐車場 4台
(近隣にコインパーキング有り)
<書き手>メディコス編集講座 第3期生 小野寺華
メディコス編集講座とは、岐阜市の魅力的な情報を集め・発信する担い手育成を目的として岐阜市が開催している講座であり、令和5年度の第3期までに68名が修了し、市民ライターとして活動しています。