どんどん、どんどん高くなる |ブログ|岐阜市シビックプライドプレイス

blog

どんどん、どんどん高くなる

メディコス編集講座ロゴ

 自宅近くから西の方向を望むと遠くに伊吹山が見える。冬になると真っ白となるのは昔と変わらないが、昨年あたりから、その手前に大きな建物が立ちはだかるようになった。柳ケ瀬に建設が進む再開発ビルだ。このビルばかりではない。岐阜の街は今、どんどん、どんどん高くなっている。いつか、街のシンボルである金華山(標高329m)を追い抜くような高層ビルが建つ日も来るのだろうか。

 高層化の先陣を切り、今も岐阜市ナンバーワンの高さを誇るのは、JR岐阜駅前に建つ地上43階、高さ162.82mの「岐阜シティ・タワー43」だ。それまで岐阜県内で一番のノッポだった、大垣市のソフトピアジャパンセンタービル(95m)の1.7倍という高さ。完成したのは、戦後最長といわれたいざなみ景気のさなかの2007年のことだった。名古屋めしで知られるゼットンの岐阜初出店、岐阜放送の入居などでも話題を巻き、分譲マンションはあっという間に完売となった。完成した当時、最上階の展望室に入場するための長い行列ができたのも今や懐かしい。

 2012年には、シティ・タワー43の向かいに高さ135.89mの「岐阜スカイウイング37」(地上37階)が完成。二つのビルは歩行者用デッキでもつながり、いわゆるツインタワーとなった。さらに2019年には300mほど離れたJR岐阜駅東側に、高さ95.24m、地上24階の「岐阜イーストライジング24」が建ち、高層ビルのある風景はすっかり周囲になじんだものになっている。スマホで岐阜駅前のツインタワーを何枚か撮影して保存したら、グーグルフォトが勝手に「摩天楼」というテーマでくくってくれた。なんと大げさな、と頬が緩んだが、考えてみれば、ほんの数十年前の人達からみれば、今の岐阜駅前は摩天楼以外の何物でもないのに違いない。

岐阜シティ・タワー43(左)と岐阜スカイウイング37(右)

岐阜の摩天楼? 岐阜シティ・タワー43(左)と岐阜スカイウイング37(右)

 忘れてはならないのは岐阜市役所だ。岐阜市司町に2021年に完成した新市庁舎は地上18階、高さ84.45m。高さはさほどではないが、完成から半世紀が経過し、老朽化が著しかった地上8階建ての旧市庁舎との差はあまりに大きく、完成時のインパクトは強かった。市長や議員向けの専用エレベーター計画を断念したことも「結果オーライ」で、市民に好印象を与えているに違いない。お役所といえば、岐阜市薮田南では岐阜県庁舎の新築工事が進んでいる。計画によると、最も高層となる行政棟は地上21階、高さ106m。2022年度の完成を目指している。やはり県としては、庁舎の高さで市には負けられないのかしらん?

 そして柳ヶ瀬。2023年2月の完成を目指して建設中の「柳ケ瀬グラッスル35」は地上35階、高さ132.64m。マンション以外、商業施設なども入る予定だが、注目されるのはやはり居住地域としての柳ヶ瀬の新しい可能性なのだろう。グラッスルは「GLASS(ガラス)」「GRASS(緑)」「CASTLE(城)」を掛け合わせた造語といい、凝った名称の付け方も気合いを感じさせるのに十分だ。ただ、日本人的な感覚からすると、「グラッセル」の語感の方がなじむ気がしないでもない。間違って覚える人が少なくないのではと、他人事ながらちょっと心配ではある。

柳ケ瀬グラッスル35

柳ケ瀬の一角に建設が進む再開発ビル「柳ケ瀬グラッスル35」

 今年になって、JR岐阜駅前には新たなツインタワーの建設計画が明らかになった。高さ約130m(地上34階)と約120m(地上32階)の二棟で、上層部にはマンションが入るという。名古屋通勤圏としての岐阜の開発が新たな段階に入ったということなのだろう。名古屋市内に通う人間の一人として、その利便性はよく分かる。ただ相次ぐ再開発で姿を消していくのは、戦後の岐阜の発展を支えた繊維問屋街だ。僕はかつて初めて岐阜にやって来たとき、この街並みにかなり驚いた。そして驚くべきことに、40年近くたった今もその街並みは基本的に変わっていない。産業の盛衰はやむなしといえ、この岐阜駅前の景観が、全国どこにでもあるようなありきたりになってしまうのはやりきれない。戦後のハルピン街に始まったアパレル産業の遺構を、何らかのかたちで高層ビルの中に残していければ嬉しいのだが。

<書き手>メディコス編集講座 第1期生 山下雅弘

 

メディコス編集講座とは、岐阜市の魅力的な情報を集め・発信する担い手育成を目的として岐阜市が開催している講座であり、第1期となる令和3年度には23名が修了し、市民ライターとして活動しています。