岐阜モーニング文化考
◆岐阜モーニングの特長
岐阜に暮らすなかで「やっぱりここに住んでいてよかったー」と感じるもの、それは喫茶店のモーニングである。喫茶店のモーニングサービスは愛知県一宮市が発祥の地といわれており、名古屋市が有名であるが、岐阜の喫茶店モーニングも負けてはいない。なぜなら、岐阜のモーニングは、「気軽に行ける」+「お得に食べる」+「ゆったり過ごす」の3点において、最高のサービスを誇っているからである。
岐阜でこのようなモーニング文化が華開いたのは、この地で繊維産業が盛んだったからだ。小さな繊維工場には応接室がなく、繊維業者が商談のために利用したのが喫茶店だった。そのため、繊維産業の発展とともに集客を競う喫茶店がモーニングサービスを充実させていったのである。
◆気軽に行ける
岐阜モーニングに「気軽に行ける」のは、喫茶店の数が多いためである。岐阜県は、人口1,000人あたりの喫茶店数が全国2位(平成26年)、喫茶店数も大阪・東京・愛知・兵庫についで全国5位である(平成28年)。筆者の住む岐阜市郊外でも、自宅の半径1㎞内に喫茶店が5,6店あり、いつでも歩いて行けるという感覚である。しかも、スタイリッシュな若者向けのカフェから地元に溶け込んだ昭和モダンな喫茶店まで種類もさまざまなので選択肢も多い。
◆お得に食べる
あるテレビ番組によると、岐阜モーニングはボリューム満点だそうだ。確かにトーストやゆで卵は定番のメニューだが、サラダやスープ、果物がついてくる店も多い。茶わん蒸しやカレーライス、うどん、焼きそばまでついてくる店もあり、もはや和洋折衷でも何でもアリである。喫茶店数が多いので競争も激しいが、このボリュームには岐阜のサービス精神が現れている。追加の料金を少し払えば、品数が増えたり大盛りになったりというメニューもあり、満足度100%間違いなしだ。
◆ゆったり過ごす
朝から落ち着いた雰囲気の店内でコーヒーなどを片手に過ごすのは極上の時間である。実際に休日には、朝早くからでも夫婦や家族連れの姿が見受けられる。また、新聞や雑誌が豊富に用意されているため、一人で訪れる人も退屈することがない。そして、岐阜では、「1日中モーニング」というサービスがある。これは、その名のとおり、朝の開店から夕方の閉店までモーニングを提供するサービスである。「もはや“モーニング”とは言えないんじゃ…」と思うが、時間帯を気にせず心ゆくまでモーニングを味わえるのは岐阜の温かいおもてなしではないだろうか。
◆素敵な時間を
総務省統計局「家計調査」によると、2019年から2021年の岐阜市の一世帯あたりの喫茶代の平均は12,921円であり、東京都区部の10,957円を抜いて全国1位、全国平均の6,522円と比べると2倍近い額である。これは、喫茶店モーニングが岐阜の文化として発展を遂げた結果だろう。これからも喫茶店でのモーニングが岐阜に住む人々の活力となり、素敵な時間を過ごす場となることを願っている。
参考文献
・総務省統計局「平成28年経済センサス活動調査」
・総務省統計局「ランキングでみた産業別・地域別の経済活動ー平成28年経済センサス-活動調査結果からー」
・メーテレ「あらゆるサーチ「一宮 vs 岐阜 モーニング徹底比較」
・総務省統計局「家計調査」(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング「外食」(2019~2021年平均)
注:冒頭の写真は、kikori cafe(岐阜市野一色4-1-21)のモーニング一例です。
<書き手>メディコス編集講座1期生 小川眞貴子
メディコス編集講座とは、岐阜市の魅力的な情報を集め・発信する担い手育成を目的として岐阜市が開催している講座であり、第1期となる令和3年度には23名が修了し、市民ライターとして活動しています。