ご当地感は「もなか」にあり ~岐阜市らしさ満開の老舗もなか 3選 |ブログ|岐阜市シビックプライドプレイス

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ご当地感は「もなか」にあり ~岐阜市らしさ満開の老舗もなか 3選

提灯もなか

 和菓子のうち、もなかはシンプル。外見は単色。ですが侮るなかれ。もなかはご当地土産を探すなら絶対チェックしたい和菓子です。生菓子などでも個性はでますが、技や手間に左右されてなかなかロングセラーとはいきません。まんじゅうや羊羹は見た目で「ここだけ感」を出すのは難しいもの。もなかは型をつくるのにお金がかかるので、色あせないアイデンティティをデザインしていることが多いのです。観光地でなくてもご当地銘菓でなくても、そこにもなかがあれば、形からその土地が見えてきます。
 最近和菓子にどっぷりはまっている筆者が、地元・岐阜市のもなかから、ご当地らしい3つのデザインをご紹介します。

 

■1. 亀甲屋本舗の「ちょうちんもなか」

創業当初から続く「ちょうちんもなか」

創業当初から続く「ちょうちんもなか」。写真は2022年3月発売の「長良川デパート」限定パッケージ
●亀甲屋本舗(岐阜県岐阜市矢島町1-68-1)

 岐阜市周辺は、福岡県八女と並ぶ盆提灯の産地です。「ちょうちんもなか」は代表的な岐阜提灯の形「御所提灯」を模し、表面に岐阜の主要観光である鵜飼の鵜と金華山を描いています。ころんと手のひらに転がるミニサイズの提灯形の皮の中には昔ながらの甘い粒あんがぎっしり。あんこの微量な水分で密着したもなか皮は、パリパリに少しのもっちりさが加わり、全体の味をまとめています。
 昭和30年の創業近くからあったこの商品、元はもなかを直接包んでいる紙だけがありました。実は縁あってこのたび限定版の外箱パッケージと中紙を私がデザインいたしました。つまり手前味噌で失礼します。
 鵜飼観覧船乗り場に近い雑貨店「長良川デパート」限定箱ということもあり、鵜飼観覧船に揺れるちょうちんのイメージを足しつつ、もとの素朴な包み紙の持つ物語から逸脱しないデザインを心掛けています。
(デザイン中、全国のもなかを調べていて「もなかこそ各地のロングセラー意匠だ」と面白くなったわけです)

 

■2. 奈良屋本店の「すずもなか」

紅白の「すずもなか」

紅白の「すずもなか」。毎年3月2日~4日のみ販売されています
●奈良屋本店(岐阜県岐阜市今小町18)

 創業は天保元年(1830年)という老舗の奈良屋本店。愛らしい小鳥形のメレンゲ菓子「都鳥」が有名なお店です。一方「すずもなか」は、近くの美江寺観音で行われていた五穀豊穣祈願の例祭にあわせ、年3日しか販売されない知る人ぞ知る銘菓です。
 岐阜市は明治から大正期にかけて養蚕が飛躍的に発展しました。美江寺観音では、明治中期から2013年まで3月の第1日曜に「蚕祭り」が行われ、蚕を荒らすネズミからの魔除けとして縁起物の土鈴が売られていました。祭りがなくなった今も、おひざ元の奈良屋では毎年3月2日~4日に紅白の幕を掲げ、土鈴の形を模したひと口大のすずもなかを販売しています。奈良屋のメレンゲ菓子しか食べたことがない方にもぜひ食べていただきたい、和菓子屋の上質なあんこ。かわいいサイズもあいまってエンドレスにつまんでしまう魅惑のお菓子です。

 

■3. 起き上り本舗の「起き上り最中」

だるま形の「起き上り最中」

だるま形の「起き上り最中」。だるま観音として知られる大龍寺では抹茶と共に提供されていました
●起き上り本舗(2022年3月閉業。岐阜市柳ケ瀬通5-5)

 コロナ禍からいまだ抜け出せない今月(2022年3月)、起き上り本舗の事業停止というニュースが飛び込んできました。コロナウィルスの流行で観光産業全体が打撃を受け、大手土産メーカーも苦戦を強いられているといいます。
 けれど、いま購入できなくなったものでも記憶に残したいものがあります。岐阜市のもなかといえば「起き上り最中」。抹茶や栗入りなど多彩な種類があり、大手通販サイトや土産物売り場に並んでいました。 
 だるま形は岐阜に由来します。織田信長は岐阜城(稲葉山城)を攻略するために7回戦って失敗しました。8回目の攻め入りの際、従者に「我まさに起き上がり最中(さいちゅう)なり」と声をかけ岐阜城を制圧したといいます。その言葉から最中(さいちゅう)と最中(もなか)をかけて『起き上り最中』という名がつけられました。
 このお菓子は戦後間もないころ、粗悪な食べ物を口にする子どもたちに心を痛めた「起き上り本舗」初代が「この子たちが安心して食べられて、笑顔になれるお菓子を、誰でも買える値段で作りたい」と想い誕生させたもの。ゆえに保存料や添加物を使っていません。ボリュームたっぷりなのもその思いからでしょうか。
 いずれまた何かの形で起き上がってくださる日を待っています。

 

■地元民に愛される「ご当地愛」の結晶デザイン

 いずれのもなかも、地元のストーリーを深く映したデザインでした。だからこそ、地元民が「岐阜から土産を持っていく」ときに、もなかを選ぶのでしょう。
 ほかにも「松乃屋」や「平工アイスクリーム店」の「アイスもなか」など、岐阜市の老若男女に思い出深く残るもなかはいろいろあります。シンプルながら奥深い「ご当地もなか」をぜひ濃いお茶とバックストーリーとともに味わってみてください。

<書き手>メディコス編集講座 第1期生 おくむら裕美

 

メディコス編集講座とは、岐阜市の魅力的な情報を集め・発信する担い手育成を目的として岐阜市が開催している講座であり、第1期となる令和3年度には23名が修了し、市民ライターとして活動しています。