“地元食材”にこだわった 作り手の想いを伝える料理人 |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.26

“地元食材”にこだわった
作り手の想いを伝える料理人

中根 正貴さん

自然派料理店 糧(カリテ)オーナー兼シェフ

1982年生まれ 岐阜市在住

大正期から続く歴史ある写真館を営む一家に生まれ、その家業を継ぐため写真の専門学校に通う。両親共働きの家庭の中で自炊を始めたのをきっかけに料理の魅力に惹かれ、調理師を志すようになる。名古屋のフランス料理店に就職し、その後フランスで修行を積む。帰国後、名古屋でフレンチの料理長を約3年勤め、フードディレクターとして世界中のさまざまなお店のプロデュースに尽力。2021年には岐阜市の川原町で自然派料理店 糧(カリテ)をオープンし、オーナー兼シェフとして地産・無農薬にこだわった料理で多くの人々を魅了している。

    1. 現在のあなたの活動について教えてください

-「糧(カリテ)」の名前の由来について教えてください。

「糧(カリテ)」には2つの想いを込めています。まずは、地元の食材だけで料理することで、岐阜の人や生産者の生活の糧となるようなお店にしたいという想い。そして、「糧」の古い読み方である「カリテ」はフランス語でクオリティ、品質という意味の言葉なので、岐阜で採れた食材の質を多くの人に知ってもらえるようなお店にしたいという想い。この2つの想いを込めて「糧(カリテ)」という名前を付けたんです。

-このお店が大切にされているコンセプトを教えてください。

「作り手の想いが伝わる料理店」というコンセプトで経営しています。だからメニューには必ず食材の生産者さんの名前を入れていて、料理をお客さんに提供する際、料理の説明にあわせて、生産者さんの紹介もすることで、お客さんに自分だけではなく作り手みんなのことを知ってもらうことを大切にしていますね。

-無農薬にこだわり始めたきっかけや想いについて教えてください。

名古屋で料理長をしていた際、大きな街であるが故にどんな食材でも簡単に手に入る環境で、誰が作ったのかわからないものが多かったんです。そこでの経験から、生産者の顔がわかる食材で料理するお店を開きたいと感じたのがきっかけです。岐阜県には海がないですが、それ以上にとても自然豊かなところで、山のものから川のものまで、1つのエリアですべてを完結できると。だからこの土地(岐阜)でお店を始めました。

-仕事のやりがいや魅力について教えてください。

この仕事の魅力は、いろいろな食材や人との出逢いです。お店を経営する中で、自分も知らない食材に出逢える、そしてそれが広がっていくのがとても楽しいです。それに、食材だけじゃなくて、お店に訪れる人の紹介でどんどんつながりが増えていくのも魅力の1つです。皆さんはご存じですか?岐阜県で高級食材の黒トリュフが採れることを。外国でしか採れないものだと思いがちですよね。僕もはじめは県内でそんな高級食材が採れるだなんて思ってもいませんでしたが、これも人から人への紹介の中で、食材の取引が生まれたんです。やはりそういった、新しい発見や人とのつながりがこの仕事をするうえでのやりがいですね。

-「糧」は100年以上の歴史ある建物を改装して作られたと聞きましたが、どういったきっかけだったんですか。

建物を紹介された当時はまだ、今のお店のような内装じゃなくてもっと天井が低くて窓とかもなかったんですけど、実家の雰囲気に姿形が似ていて温かい感じがしたんですよね。それで気に入ったんですが、実際に自分でバールを使って天井を解体してみたらすごい広い天井が出てきたり、壁を壊してみたらおしゃれな窓ガラスが出てきたり…その後の驚きがいっぱいでした(笑)。結果的にとても素敵なお店にすることができたと思っています。

-地産・無農薬にこだわる料理でどんなことを伝えたいですか。

地元岐阜の食材の良さを食べた人に伝えたいと考えています。地元にいると、そこの食材がある環境が当たり前で特別感を感じないかもしれませんけど、実はそれが他の地域に比べて品質も味も優れているということがあるんですよね。特に自分は県外の出身だったから、余計に岐阜の食材の質の良さに驚きました。そうやって、うちの料理を食べた人たち、特に岐阜の人たちが、改めて地元の食材の品質や味の良さに気づいてほしいと考えています。それに最近は物流コストが高くなってきていて、地元の食材を地元で消費していくサイクルのほうが私たちにとっても農家さんたちにとってもお互いにプラスになると思うんです。そのサイクルを生み出すきっかけの1つとしてうちの料理があると嬉しいですよね。

「郡上鮎のコンフィ 自家製うるかと熟鮓飯(なれずしめし)のソース」

これからの野望(目標)について教えてください

岐阜って観光名所があまり多くないと思うので、「食」が岐阜に来てもらうきっかけになれば嬉しいですし、もちろん「糧」もそういった存在になれればと思っています。地元の人ももちろんですが、県外の人にも岐阜の食材の魅力をアピールしていきたいです。

あなたの考えるシビックプライドとは?

県庁所在地のメイン駅から車で10分の川で天然の鮎が採れるところなんて、全国探してもどこにもないと思います。都会なんだけどちょっと行ったら自然が広がっていて伝統工芸品もあって、なかなかまちとしては魅力的だなと思います。最近は、あらゆるものも価格が高騰していて将来の「食」への不安は大きくなっていると感じますが、人と自然が共存する岐阜市のような環境であれば、生産者・消費者含めて、みんなが安心して生活していけるまちにできると考えています。

  1. コメント

岐阜には本当に素晴らしい食材を作る人がたくさんいます。皆さんにそんな作り手さんのことをたくさん知ってもらいたいです。

取材日 2023/10/4

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