手しごとがつくる「笑顔」と「想い」のつなぎ役 |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.25

手しごとがつくる「笑顔」と「想い」のつなぎ役

古澤 由加里さん

NPO法人 ひだまり創 理事長
介護エステケア協会 会長

1984年 岐阜県生まれ  

2010年に介護業界に入って以来、一貫して高齢者介護に携わる。介護する側・される側という一方向の立場しかない状況に疑問を感じ、2016年に高齢者の身だしなみ支援を行う介護エステケア協会を発足。2017年にはNPO法人 ひだまり創を発足し、居宅介護支援・訪問介護などの介護保険事業のほか、多世代交流マルシェや高齢者のものづくり支援等を行っている。その活動は多岐にわたり、従来の在宅型でのものづくり支援にとどまらず、2023年には地域交流スペースとして「つくるん」をオープンし、地域の高齢者の集いの場、共にものづくりができる場作りにも注力している。

    1. 現在のあなたの活動について教えてください

-古澤さんが理事長を務めるひだまり創の活動について教えてください。

私たちは高齢の方を支援しています。 “生きるを支える”事業として居宅介護支援(ケアマネ)事業と訪問介護事業、障がい者福祉サービスの居宅介護事業を行っています。そして、支えられるだけでなく、高齢の方に生きる喜びを感じてもらうための“生きるをつくる”事業としてものづくり支援や、介護エステケアにも取り組んでいます。

-この活動を始めたきっかけについて教えてください。

介護の現場に携わっていると、高齢の方から「長く生きていて申し訳ない」、「こんなにお世話させてしまって申し訳ない」と言われることが多かったんです。だけどせっかく長生きされてきたのにそんな気持ちにはさせたくないという思いがありました。そんな気持ちを抱かせないためにはどうしたらよいか、介護で日常の困りごとを手助けするだけでは解決できないのでは、と考えたのがこの活動を始めたきっかけです。そんな誰かの役に立つ、人に必要とされる機会の積み重ねが、生きる喜びを感じてもらうための“生きるをつくる”支援へとつながっていきました。
まずは高齢の方に身だしなみを工夫することで自分を好きになってもらおうと介護エステを始めました。さらにたくさんのおばあちゃんと関わる中で、縫製や編み物など、ものづくりの経験を持つ方が多いことに気が付きました。縫製の技術を持つ方は工業用ミシンも使いこなせるなど多才なんです。そういったできることを活かして高齢者が作ったものを誰かの手に届ける橋渡しをしたい、という思いでこの活動を続けています。
最近では、社会福祉法人いぶき福祉会と連携して作業所で捨てられていた小麦粉袋のアップサイクルにも取り組んでいます。いぶきの利用者の皆さんが小麦粉袋に絵をかいて、おばあちゃん達の技術でエコバックに仕立てて再生させています。この取り組みを通して、人のつながりが生まれるだけでなく、高齢者の自信や生きがいにもつながる上に、高齢者の技術を多くの人に伝えることができると考えています。

地域交流スペース「つくるん」にておばあちゃんが小麦粉袋をエコバックに仕立てている様子

-活動を通して感じる成果(高齢者の居場所作りなど)について教えてください。

高齢者のできることを地域の方や他の世代とつなげるには、気軽に集まれるような居場所が必要だと思い、クラウドファンディングで多くの方の支援もいただきながら完成したのが「つくるん」です。ひだまり創の新しい拠点として、高齢者が集まり、相談したり、一緒にものを作ったりできるコミュニティスペースです。子ども食堂を開くこともありますし、今後はカフェのオープンも予定しています。このスペースでの活動を通して、もう一度ものづくりの意欲が芽生えた高齢の方がいるので、そのきっかけになれたのはとてもよかったなと感じています。

-活動を通して感じるやりがいや大切にしていることについて教えてください。

はじめて多世代が交流できるイベントを開催したときに、それまで誰の手にも渡らず、部屋の片隅に置いてあったおばあちゃんの作品を小学生の子が嬉しそうに買ってくれて、それを見ていたおばあちゃんもすごく嬉しそうだったんです。その様子を見て、やっぱりお世話するだけじゃなくて自分も誰かになにかをしてあげることが喜びになるのだと実感しました。そうやっておばあちゃん達が喜んでくれるのが一番のやりがいだと感じています。こういった双方が笑顔になれる場をもっともっと増やしていきたいと考えています。
また、単にモノの交流ではなくて、そのモノにこもっている想いやおばあちゃんたちの人となりが伝わる仕組みにしたいなと考えていて、モノを介して誰かとつながっている実感が持てる仕組み作りを常に心がけています。

-「利用者と働き手のどちらもが笑顔でいられるプラン作り」の過程で感じる難しさや面白さはありますか。

難しさとしては、高齢者のやってみたいことと貰い手の欲しいもの(需要)が違うことがありました。貰い手に喜んでもらえる形にしようと需要にばかりに気を取られてしまうと高齢者の気持ちが遠ざかってしまうことがあって、双方が笑顔になれる、納得のいくポイントを作るのが難しいと感じています。でもそのポイントが見つかって、交流が生まれると、つながりを作れてよかったなと思いますし、そのポイントを見つけるのが一つの面白さだと考えています。

これからの野望(目標)について教えてください

まだまだ駆け出しですが、この活動を増やして、例えば編み物だったらこんなつながり方がありますよ、絵だったらこんなつながり方がありますよという風に多彩なおばあちゃんたちの才能ひとつひとつにつなげ先を見つけ、選べる自由を作っていきたいです。また、それが地域にも循環してほしいと考えています。ここでモノを作って完結するのではなく行き先までちゃんとあって、地域のパワーアップにも貢献できるような形で、おばあちゃんたちの力が循環できる社会の仕組みを作っていきたいです。

地域交流スペース「つくるん」の一角。写真にうつる編み物はすべて高齢者が手づくりしたもの。

あなたの考えるシビックプライドとは?

岐阜市は繊維業のまちで、縫製の内職をしていた方が多く、手しごとができる高齢の方が多いんです。高齢者の技術の背景には、そういったまちの歴史や子どもたちのカバンや服を手しごとで作ってきた愛情がたくさん詰まっているので、この技術と愛情を現代の方にはもちろん、この先の未来へとつなげていきたいです。

  1. コメント

ものづくりの得意な高齢の方がいらっしゃいましたら、ぜひ、「つくるん」で一緒に挑戦しましょう!!

取材日 2023/8/3

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