柳ヶ瀬 ✖ 古道具親子で生み出す新たな価値 |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.21

柳ヶ瀬 ✖ 古道具
親子で生み出す新たな価値

上田 沙奈さん

古道具 mokku mokku 店主

1993年 岐阜市生まれ

偶然の出会いから庭師やワカメ漁の手伝いといった職に就いた後、生まれ育った柳ヶ瀬に戻り、父親の始めた空きビルの再生プロジェクト「やながせ倉庫」に携わる。2017年には父親とその仲間たちの想いを引き継いだ「古道具 mokku mokku」の店主となり、新店舗をオープン。レトロな家具や建具、生活雑貨が並ぶお店は古さと新しさの同居する柳ヶ瀬を象徴するかのように文化の香りが立ち込め、市内外から訪れる多くのお客さんを魅了している。

    1. 現在のあなたの活動について教えてください

― まずは上田さんの携わってきた「やながせ倉庫」のプロジェクトについて教えてください。

「やながせ倉庫」は父(上田哲司さん)が祖父から引き継いだ空きビルをカフェや古着屋、雑貨店、作家のアトリエなど個性豊かな店が集まる建物に改装したものです。その始まりは2003年頃、私が小学校中学年の時だったと記憶しています。今でこそリノベーションの先駆けなんて云われますが、父はもともと全然クリエイティブな人ではなく普通のサラリーマン。そんなことをするタイプではないんです。建て直したり壊したりするお金なんてない中、「このボロビルをどうにかしないかん」。とにかくその一心で色んな人の知恵を借りながら、自分たちの手でビルを改装し、きちんとお客さんが来れる場所にしようという考えにたどり着いたみたいです。
私もそんな父の背中を見ながら中学生くらいから「やながせ倉庫」の改装を少しずつ手伝うようになり、それがきっかけで柳ヶ瀬の色んな人との関わりができたと思っています。

― 古道具 mokku mokkuの歴史も教えてください。

もともと「やながせ倉庫」の中で、とある経営者の方が今とは違う名前の古道具屋をやっていたそうですが、その方がこのお店を辞めるとなった時に「こんなに面白いお店をやめてしまうのはもったいない」と言って父が引き継いだのがきっかけです。それで父が古道具 mokku mokkuのお店を始め、2017年には現在の柳ヶ瀬本通り沿いのお店(柳ヶ瀬で長く愛されてきた呉服店の跡地)に移転。そのタイミングで私が店主として働き始めました。
お店には本当に色んなお客さんが来てくださいます。新しくお店を始める方や引っ越しして家具を買い替えたい方、海外から旅行に来て日本の古いものを自分の国の家族へのお土産にいっぱい買って帰られる方…。古道具は自分が使っていたわけではないので初めて見るものが多く、そこに魅力や楽しさがあるんだと思います。

― 古道具を仕入れるためには、その価値を見定める高度な知識が必要ではないですか。

もちろん本当に良いものかどうかは経験年数がないとわからない部分もあります。でもわからないからこそ、新しい価値を見出せるというところもある。だから一般的に価値のあるものだけを扱うのではなくて、直感的な部分も大事にしたいと思っています。歴史的に高価なものが今の時代にも同じように価値があるかといったらそれも少し違って、当時は全然価値がないものとして扱われていたけど今見たらめちゃくちゃ面白いものもたくさんあります。時代に合わせてちょっと見せ方や使い方を変えると、またすごい新しい価値が生まれるところが古道具の良さ。自分の直感で「これ面白い」って買取するほうが多いですね。直接話したことはないですが、きっと父も同じようなことを考えてやっていたと思います。

― 自ら新たな価値を見出し、それをお客さんに提案する。古道具屋というお仕事の面白さが伝わってきました。

古道具から人として学ぶことってすごく多いんです。使っていた当時の話を引き取り先の方から色々と聞かせてもらえるし、直接ものに触って感じ取れることもある。だから買取には私も他のスタッフと一緒に行くし、自分で修理もします。
買取はご高齢の方の家や店舗などからお声掛けをいただいて本当に色んなところに行きますね。中にはもう自然に還りかけている建物なんかもあって、床が抜けて2階から落ちたことも何度かあります(笑)。あと修理に関しては敢えて必要最小限に留めるようにしています。これも自分と父の共通点ですね。もちろん全部解体してしっかりと組み直せる職人・スタッフもいるのですが、私たちはズレがあるところも当時の良さとして残したいと思っていて、あまりキレイにし過ぎないことに気を付けています。
自分たちの扱う商品から学ぶことのできるこの仕事はすごく楽しいなと思います。

― 柳ヶ瀬エリアではあちこちでリノベーションが進んでいます。上田さん自身の活動と重なるところはありますか。

古道具と柳ヶ瀬ってリンクするところが多いと思います。古道具も当時のままのカタチでは、価値があっても周りから見てもらえない、評価してもらえないことがあります。柳ヶ瀬商店街も同じで、当時のままのやり方では、やっぱり今の人たちにはウケないと思っています。古道具も商店街も、その時代に合わせて変化するからこそ、どんどん面白いものに変わっていけるんだと思います。

  1. これからの野望(目標)について教えてください

良く聞かれるんですが、いつもその時の直感とフィーリングを大事にしています。
(柳ヶ瀬のお店に続き、岐阜市内に岩田店・北一色店もオープンしましたが)ふと「次、店出すか」みたいな感じなんですよね。
ただ、今の古道具 mokku mokkuのテイストを変える気はないのですが、生まれも年齢も異なる色んな感性を持つスタッフがいてくれるので、私だけの想いでmokku mokkuを形作るのではなく、スタッフそれぞれの感性を用いて新しいことをできたらいいなと思います。スタッフがチャレンジしてみたいことを一緒にやってみたいし、また、そういうことができる場所でありたいなと思っています。

  1. あなたの考えるシビックプライドとは?

最近特に思うんです…柳ヶ瀬って独特の場所だから感性豊かな人が来てくれるんだなって。だから、そういう人たちに着目してもらえることが私にとって、このまちの誇りです。アーティスティックな柳ヶ瀬でありたいし、色んな感性や新しいものをどんどん受け入れられる商店街であり続けたい。それは古道具 mokku mokkuのお店も商店街も同じです。

  1. コメント

柳ヶ瀬商店街に気楽に遊びに来てほしいですね。変な人がいる商店街なので(笑)。周りも気にしなくていいし、色んな面白い人と関わることもできる。人を受け入れてくれる環境のある、結構心安らぐ商店街なんですよ!

取材日 2022/11/10

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