“素敵な巡り合いと共に” ワクワクさせる一瞬をデザインする |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.32

“素敵な巡り合いと共に”
ワクワクさせる一瞬をデザインする

下山 祥子さん

デザイナー
イラストレーター

1977年 岐阜市生まれ

幼い頃から絵を描くことが好きで、大学でデザインを学ぶ。
卒業後、朝日新聞社のデザイン部に入社。14年間勤務し、新聞のグラフィックデザインを担当。
現在は岐阜に戻り、フリーランスのデザイナー、イラストレーターとして活動中。イベントのチラシやポスター、ロゴデザインまで幅広く手掛ける。

現在のあなたの活動について教えてください

― デザイナーとしての活動について教えてください。

岐阜でのイベントに関わらせていただくことが多く、主に印刷物のデザインをしています。最近は、善光寺さんやメディコスさんともお仕事させていただいています。

アイデア出しからイラスト制作、デザインまでを自分で行っていて、紙にイラストの原画を描き、それをパソコンに取り込み、デジタルで色付けをしていくのがいつものやり方です。アイデア出しは、デザインを手書き風にしてみたり、グラフィカルでかっこよくしてみたり、いただいたお仕事の内容に合う雰囲気を模索しながら行っています。イラストを描くときは、文字の配置を先に決めて、文字を載せる部分は描きが細かくならないように調整することで、文字情報が見やすくなるようにしています。

デザインはどの工程も大変ですが、それぞれの工程が進んで次の作業への目途が見えてくると楽しくなってきますし、完成が見えてくるとやっぱり嬉しいですね。締切があるのでいつもドキドキしますが、毎回なにか一つは新しい表現を取り入れ、チャレンジするようにしています。

最近は私の好きなように任せていただけるお仕事も多くて、自分のペースですごく楽しくお仕事させていただいています。

 

― 岐阜でデザイナーをすることになったきっかけを教えてください。

幼い頃から絵を描くのが好きで、将来は絵やデザインをお仕事にしたいと考えていました。大学はデザイン科に進学して、グラフィックデザインや視覚伝達デザインを学びました。

卒業後は、朝日新聞社のデザイン部に入り、 記事の挿絵や地図、グラフ、タイトルカットなど、記事以外の部分の構成やイラストを作るお仕事をしていました。記事の内容を分かりやすくするためにいろいろ小さな工夫をしていくお仕事です。 当時、だんだん新聞が読まれなくなってきている時代だったので、記事に「どんな視覚的な工夫をしたら読んでもらえるだろうか」、「分かりやすく情報が伝わるだろうか」ということを意識していました。すごくやりがいのあるお仕事で、14年ぐらい勤めましたが、新聞社のお仕事は深夜まで作業が続くことが多く、結婚して子供が生まれた頃から、これから深夜に働くのは大変だなと考えるようになりました。これからの働き方を考えているとき、ふと「岐阜に戻る」という選択肢が候補として浮かんだんです。「今しかない!」と思って勢いで会社を辞め、それと同時に岐阜に戻ってきました。山も川も近いし、子どもにとってもすごくいい環境だと思いました。

引越したばかりの頃は知り合いも全然いなかったのですが、ご近所にまちづくり団体があり、ある時お声掛けいただけて、そこからデザインのお仕事を再開しました。そのご縁で、善光寺さんともお仕事をするようになり、「ミライの参道まるけ」というイベントのチラシデザインを任せていただくようになりました。メディコスさんとのお仕事もそのチラシがきっかけですね。

まわりに地域と関わる活動をしている方がたくさんいて、いろいろな方たちと知り合えた巡り合わせが今のお仕事に繋がっています。

 

― メディコスとのお仕事では、どんな思いを込めて制作されましたか?

はじめてチラシデザインのお話をいただいたときは、「嬉しい!」って思いました!
私、本も大好きで、図書館をよく利用させていただいているのですが、メディコスっていいですよね。こうでなきゃいけない、みたいなものがない自由さがあって、中学生が館内でカードゲームをやっていたりする光景も、なんだかすごくいいなと思っていて。フレンドリーでオープンな雰囲気がすごくありますね。

当時のメディコスのチラシやポスターは、クラシカルでカッコいいものが多い印象だったので、あえて手書き風で細かく描き込むイラストにして、シンプルとは対照的に仕上げることで、新鮮さを出そうと考えました。メディコスからたくさんの木を生やして、大きなみんなの森になっているというイメージで制作し、メディコスがすごく楽しい場所だよっていうことが一番に伝わるデザインにしたいと思っていました。

左:「メディコス夏まるけ 2023」チラシ
右:「秋のゆったりカルチャーマルシェ 2023」チラシ

「メディコス夏まるけ 2023」チラシでは、館内にいろいろな施設が入っていることや、多くのお店が協力して一つのイベントを作るということを表現するため、様々なアイテムや動物のキャラクターなど、要素をたくさん盛り込んだイラストを描きました。自由な本の世界のように、ファンタジー感のある魔女や王様、鬼なども登場させています。

「秋のゆったりカルチャーマルシェ 2023」チラシは、館内に入ったら、いろんな楽しそうなことがありそうだと思ってもらえるように、建物の壁は描かず、キャラクターたちが読書をしている様子や、イベントやおしゃべりを楽しんでいる様子をボリューミーに描きました。

「メディコスと岐阜町をつなぐまち歩きMAP」

「メディコスと岐阜町をつなぐまち歩きMAP」では、メディコスから岐阜公園や川原町の方へ歩く人を増やしたいというメディコスさんの考えにすごく共感できました。歩ける距離だったとしても、きっかけがないとなかなかまち歩きをするのは難しいですよね。なので、メディコスに訪れた方たちに「ここを目指して歩いてみようかな」と思わせるような地図にしたいと思いました。

原画は、目的地が近く感じるように、実際の地図で見るよりも道幅を狭めて、建物同士を近づけて描くなど、視覚的に操作しています。 まずメディコスが一番大きく見える角度を選び、メインの目的地として伊奈波神社・岐阜公園・川原町を設定して、そこに向かって歩きやすい見え方をするように構図を工夫しました。地図なので建物が多くて大変でしたが、それぞれの建物の特徴を捉えて描くことで、実際に歩きながら「あれだ!」と見つけながら楽しくまちを歩いてもらえるように、一つひとつ作業を進めました。

MAPのエリアは知り合いのお店が多いので、店主さんのことをイメージしてキャラクターを描いたり、手にそのお店のお菓子を持たせたり。ご近所さんの顔と思い出を振り返りながら描きました。市民の皆さんがまちのおすすめスポットを紹介するワークショップをふまえてスポットを選んだので、そのスポットのそばに紹介者の方たちも登場させ、こちらを向いてにっこりさせています。ただ位置情報を伝えるだけではなく、「こっちだよー!」と呼んでいるような地図を作りたいと思ったんです。ワークショップの参加者さんもまちに対する熱い思いを持っていて、その思いも含めてこのMAPが出来上がっています。

近いから少し歩いてみようとか、子どもとここのお菓子屋さんに行こうとか、MAPを手に取った方たちにそんなふうに思っていただけたら嬉しいですね。

― イラストに様々な動物が出てくるのはなぜですか?

もともと動物を描くことが好きなんです。
イラストでは、「人」のイメージで動物たちを登場させることが多いですね。多様な種族の動物たちが一緒に過ごす様子を描くことで、大人も子どもも、いろいろな人たちが仲良く集まって楽しく過ごしていることを表現しています。

「メディコスと岐阜町をつなぐまち歩きMAP」の原画

 

― お仕事で一番大事にしていることを教えてください。

一番大事にしていることは、皆さんの印象に残るようなものに仕上げるということですね。
チラシが置かれる場所の雰囲気や環境、どんな層の方の目に入りやすいかということにはかなり気を遣っています。チラシが配置された時、通りがかった人の目に留まるようなデザインにすることを常に心掛けています。
その一瞬に、少しでも多くの方にワクワクしていただけるようにがんばっていますね。たった一瞬だけでも、自分の作ったもので楽しんで欲しいんです。見てくださる方のことを考えながらいつも制作しています。

 

― お仕事で感じる喜びを教えてください。

新聞のお仕事にも共通することですが、チラシやポスターなどは人目に触れるのは一瞬で、実際自分の仕事で皆さんがどう感じてくださったのかは確認できないことがほとんどです。

岐阜に戻ってからのお仕事では、見てくださったお知り合いの方から「見たよ!」「良かったよ!」と言っていただけることもあって、すごく嬉しくて励みになっています。

 

これからの野望(目標)について教えてください

「メディコスと岐阜町をつなぐまち歩きMAP」の原画ですごく大きな絵に挑戦できたことがすごく楽しかったので、また大きな作品にチャレンジしたいです。お仕事としてではなく、自分のための作品として仕上げてみるなど、自分がやりたいことにも積極的に取り組んでみたいと思っています。

そして、ちょっとしたことでも、いろいろな面白そうなことをこのまちでやってみて、自分がまだ知らないことを学びたいです。学んで得たことと自分のスキルを組み合わせて、なにか新しいことも始めてみたいですね。

また、挑戦していく中で、自分が誰かの力になれることがあるならぜひやってみたいです。

 

あなたが考えるシビックプライドとは

岐阜のまちは、すごくきれいなところですよね。緑が豊かで、空気も澄んでいて、すごく過ごしやすいです。

昔の面影が残るまち並みと新しく生まれたものが共存し、ちいさな面白いことがたくさん集まっていて、岐阜って楽しいまちだな、素敵なところだなと、大人になった今、より一層感じます。

そして、ちいさなまちだからこそ、「自分がここの一員だ」という感覚がすごくあります。
例えば、喫茶店でお茶をするだけでも、自分が経済を回しているなとか、この素敵なお店を自分が応援できるかなというふうに思うことができます。いろいろなことに参加するハードルが低くて、自然と主体的に活動できるようになったと感じますね。

ご近所さんや地域の方と関わりながら、まちの皆さんの暮らしをちょっとだけ楽しくするようなことを続けていけたら嬉しいです。

 

コメント

デザインは、だれかの夢を叶える一つの手段です。
そのひとの考えるイメージを引き受けつつ、情報の伝達を手伝うお仕事なので、自分なりに誰かの力になれるのはすごく嬉しいです。何か始めたいことがある方は、私でお役に立てることがあるのならぜひお声掛けください。
ひとりひとりのできることを掛け合わせて、何か楽しいことが始まる機会に巡り合うことができれば、すごく素敵だなと思います。

取材日 2025/5/12

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