No.29
花火が魅せる伝統の技と岐阜の心
村瀬 功さん
株式会社村瀬煙火 四代目・専務取締役
1985年 岐阜市生まれ
大正12年から続く、岐阜市で唯一花火を製造・販売する「村瀬煙火」の四代目。80年近く長良川の花火大会に携わり、同社で製造する岐阜長良川花火は岐阜が誇る伝統工芸品である。長良地域で生まれ育ち、大学時代に一度は県外に出たものの、卒業後は生まれ育った岐阜市で歴史ある会社を継ぐことを決意。コロナ禍には、花火師としてできることはないかと模索した結果、全国一斉に打ち上げるサプライズ花火大会やネット配信の花火大会を企画し、花火の新たな可能性の実現に尽力。現在はぎふ長良川花火大会やぎふ長良川の鵜飼の花火をはじめ、岐阜県内外で行われる花火の打ち上げを担っている。
現在のあなたの活動について教えてください
― 村瀬さんの現在の仕事の具体的な内容について教えてください。
花火の管理から製造、打ち上げ、花火大会主催者との打ち合わせといった、花火に関わる業務全般を行っています。花火の打ち上げ当日は、大体朝7時頃に現場へ行き、工場から花火を運ぶトラックをどんどん受け入れて、セッティングを始めます。その後、主催者との打ち合わせや現場での確認を経て、夜は花火の打ち上げを行い、片付けまですると、だいたい夜11時ぐらいになります。
花火がある日の流れとして、今は昔と違って当日の現場での作業が減ってきています。昔は現場に筒を持ってきて、現地で花火玉を仕込んでいたので、時間に追われる作業でした。でも今は工場内ですべて準備し、現場ではものを置いて配線するだけになっているので、時間に余裕がありますね。
また、花火の打ち上げは夏の印象がありますが、年中を通して花火に関わる仕事をしていて、年間を通しては花火の製造がメインの業務です。
― 村瀬煙火の花火の特徴を教えてください。
一番の特徴として、花火の形がすごく綺麗だといわれることが多いです。
花火は大体1000倍くらいに玉の大きさが広がるので、花火玉を込めるときの少しのずれが、そのまま打ち上げられた花火の形に影響してしまいます。花火玉内部のわずかな隙間が上空で大きな隙間となり、綺麗な形にはならないことがあるんです。そこが難しいのですが、綺麗な花火を作るために意識しています。
それ以外にも色へのこだわりがあって、村瀬煙火独自の水色の花火も作りました。花火の色は、無限にある火薬の配合による組み合わせでどんどん変化します。初めの粉の状態は近い距離で見るので綺麗だなと思うんですけど、打ちあがると100m以上上空で花火が開くので、試してみないと分からないことも多いです。試行錯誤しながら日々花火の研究に取り組んでいます。
村瀬煙火にしかできない形や色の綺麗な花火を打ち上げることが、皆さんの喜びに繋がると思っているので、一発一発を大切にして花火を製造し、打ち上げていきたいです。
― 村瀬煙火の四代目ということですが、家業を継ぐことに対しての想いはありましたか。
実は初めは会社を継ぐことは全然考えていませんでした。でも大学の就活で進路を決めるとき、初めて家業を継ぐことを真剣に考えました。村瀬煙火は創業から今年で101年経つのですが、私が継がないともうやめると先代は言っており、それはもったいないと思ったので、昔からある大切な会社を継ごうと決めました。花火が特別好きだったわけでもなかったのですが、実際に継いで見ると面白い部分もたくさんありますし、継いで良かったと思っています。
― 村瀬さんが感じる花火の魅力について教えてください。
花火は人を集めることも簡単にできますし、どの年代の方でも楽しめるのが一番の魅力で、家族全員で来られるイベントとして楽しんでもらえていると思います。こんなにも老若男女問わず、すべての年代の方に喜んでもらえるものって他にないのかなと思います。
聞こえてくるお客さんの歓声や拍手がすごく嬉しくて、一番は安全に配慮しつつも、その次にお客さんに喜んでもらうことを大切にして花火を打ち上げています。
私自身は打ち上げの時は花火大会の本部にいることが多く、お客さんがすごく近くて、打ち上げている最中の反応がダイレクトに伝わってくるので、その反応をプログラムを作る際などに社員と共有し、お客さんが望んでいる花火を打ち上げられるような演出を決めています。
― 岐阜を拠点に活動する花火師としてどのような想いがありますか。
やっぱり地元の花火大会は一番力が入るので、「岐阜の花火はこれだ」というものを全国に出せるように日々開発を頑張っています。今年のぎふ長良川花火大会では、我々のプログラムも非常に好評をいただき、色々な方からすごく良かったという話を聞いていて、とても嬉しく思っています。
実は岐阜市って花火が打ち上がる回数が全国的に見てものすごく多いんです。市内で花火をよく見かけると思うのですが、鵜飼漁開始の合図の花火も含めて、大体一年間のうちの半分くらいは花火が上がっています。なので、岐阜市の方にとって花火はすごく身近な存在なのかなって思います。
また、岐阜市ではほかの地域と比べて花火に対する苦情が少ないんです。これだけ花火を上げているのに、ご理解いただけているのがありがたいです。
これからの野望(目標)について教えてください
生産量をアップしても一定の質で良いものを作っていくことや、海外展開することが目標ですかね。コロナ禍を経て花火業界全体としてすごくレベルが上がったなと思っていて、おそらく皆さんの見る花火が今後どんどんよくなっていくと思いますし、海外でも日本の花火が見られる機会が増えるといいんじゃないかなと思います。
あなたが考えるシビックプライドとは
周りを見ていて岐阜市生まれの人は岐阜のことが好きな人が多いと感じます。自然もありますし、町としても発展していますし、すごく良い町だなって思いますね。でも廃れてきている地域もあるので、もう少し人が集まる地域にしていきたいです。それこそ長良川沿いでいうと、鵜飼のオフシーズンも含め、年間を通して人がいる町になっていったらいいなと思います。
コメント
いつも花火を楽しんでいただきありがとうございます!
これからも花火をよろしくお願いします!
取材日 2024/08/27