仲間とつなぐ「ミライの参道」 |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.19

仲間とつなぐ「ミライの参道」

松枝 朋子さん

岐阜善光寺 若お庫裏
善光寺大門まるけ事務局
株式会社岐阜まち家守 取締役事務局長

1976年 岐阜県生まれ

2005年、当時岐阜善光寺の副住職をしていた夫との結婚を機に岐阜市へ移住。夫とともに「お寺を人の集う場に」を合言葉とし、寺を文化的な拠点、コミュニティの場にするべく寺務に携わる。その一環として、2014年から境内でのマルシェとして始めた「善光寺大門まるけ」の事務局を担当。2018年に夫が急逝した後も活動を続けながら、2021年、旧岐阜町(金華、京町地区)の景観と建物を守るまちづくり会社「株式会社岐阜まち家守」の取締役に就任。お寺とまちづくりのダブルワークに挑戦している。1男1女の母。

    1. 現在のあなたの活動について教えてください

― 実行委員長として2022年5月に参道で開催したマルシェ「ミライの参道まるけ」は大変な賑わいでした。そこに込めた想いを聞かせてください。

2014年から続けている「善光寺大門まるけ」は2022年で9年目を迎えます。2018年に夫が亡くなった時には休むことも考えましたが、夫が生前「続けることに意味があるんだよ」と言っていたことを思い出し、頑張って続けてきました。そうしたら、同じまちの仲間が「寺の御開帳にあわせて大きなまるけをやろう」と声掛けしてくれて「ミライの参道まるけ」を開催することになったんです。善光寺の参道の通り、その南北の通りは50年くらい前まですごく多くのお店が軒を連ねていました。今はそれがなくなってしまうばかりか町家がどんどん壊されています。もう一度昔の賑わいを取り戻す、それも新しい形で賑やかな参道にできたらいいなという願いを込めて企画を考えました。想像以上にたくさんの人が来てくださり、本当にやって良かったと思っています。

― 「株式会社岐阜まち家守」の設立の経緯やこれまでの活動についても教えてください。

このまちで生まれ育った山本慎一郎さん(油問屋『山本佐太郎商店』四代目)と、このまちにずっと関わって活動してきた蒲勇介さん(NPO法人ORGAN理事長)は古い町家の建物が壊され、歴史文化の色濃く残るまちの景色が変わっていくことが残念で悔しくてもったいないという想いをずっと抱いていて、その想いを同じくする2人が2021年に作ったのが「株式会社岐阜まち家守」です。そこで私にもお声掛けをいただき、2人の想いに賛同して乗っからせてもらいました。それまでは山本さんが個人的にこの地域の物件を紹介しながら色んなお店を誘致してきたそうですが、会社を作ることでチームとしてマッチングしたり、効率的に動くことができ、パワーアップする。簡単にいえば不動産業なので、私は全然畑違いでわからないことばかりですが、色々とアドバイスをくださる方がいて支えてくれています。そして、岐阜まち家守がマッチングした出店者の第1号が「岐阜麦酒醸造(Tap Room YOROCA)」さんです。お店ができたことで人が集まり、まちの景色も変わってきたように感じます。

― 「まるけ」も「岐阜まち家守」の活動も目指すところは同じかと思います。2つの取組の相乗効果として期待するところはありますか。

以前、20代くらいの人にこのまちのイメージを聞いたら、「普段は通過点でお正月にしか来ない」と言われたことを覚えています。今このまちに足りないのは若い人たち。だから、岐阜麦酒醸造さんのようなお店が2店舗目、3店舗目と面のように増え、まち全体に広がる新しい風、賑やかな空気を若い人に感じてもらいたいです。「まるけ」はそうした若い方たちにも気軽に来てもらって、この参道の魅力を知り、関心をもってもらうための呼び水としての意味合いもあります。そういうきっかけをつくることによって、シェアハウスなどでこのまちに実際に住んでもらったり、1ヶ月くらいのチャレンジショップでも大歓迎なのでお店をやってみたいという方が増えれば嬉しいです。

  1. これからの野望(目標)について教えてください

空き家がある一方で、古いまちが好きという人がいます。私たちのネットワークをもってして、そうした移住したい、出店したいという人を古い町家や建物の物件につなぐことで、誰もがこのまちに入りやすい状態をつくっていきたいです。それは、先人から受け継いだこのまちの良いものを新しい形で次の世代につなげていくということ。中学2年生の娘に、このまちの好きなところは?と尋ねたら「街なのに自然が豊かなところ。でも最近は古い建物が壊され、まちの風景が変わってきてしまっている。だからお母さんたちがやっている活動は意味のあることだと思う」と言ってもらえました。ここに全てが詰まっているような気がします。今を生きる子どもたちが、こうやってまちを守ろうとしている大人たちがいることを見てくれると、このまちにも良いところがあるんだなとちょっとでも感じてくれるのではないでしょうか。そして、大人になった時にまた戻ってきてくれるのかなと思っています。

  1. あなたの考えるシビックプライドとは?

このまちに関われていることかなと思います。それは、仕事であったり、このまちに住んでいることでもあるのですが、私の場合は特にたくさんの「人」に支えてもらい、一緒に活動できていることがシビックプライドだと感じています。このまちに愛着があり、景観や文化を守り、発展させたいと真剣に向き合う仲間がたくさんいることがとても心強く、私の原動力になっています。

  1. コメント

「新しくお店を出してみたい」「古い町家が好き」とか何でもいいのですが、「このまちに興味がある」と思っても誰に相談したらいいのかわからないという人がいっぱいいると思います。そんな時、ちょうど聞きやすい人がいるなというのが私の立場だと思っているので、ぜひ気軽に声をかけてください。

「ミライの参道まるけ」にて(山本慎一郎さんと)

取材日 2022/8/25

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