「長良川に千年続く祭りを作りたい」 立ち上げメンバーの一人、古田菜穂子さんが語る『こよみのよぶね』
一年で夜が一番長い日、冬至。
その冬至の夜に長良川で開催される『こよみのよぶね』を皆さんはご存じでしょうか?
今回は2025年の開催で20回目を迎えた『こよみのよぶね』について書いていきたいと思います。
◆『こよみのよぶね』とは◆
冒頭にも書いたように『こよみのよぶね』は冬至の夜に長良川で開催されます。
その様子を「第20回こよみのよぶね」のチラシを元に時間と共に追ってみましょう。
冬至迎え 16:00~17:30頃 <鵜飼観覧船のりば>
鵜飼船に取り付けられた和紙で彩られた1から12の数字行灯に明かりが灯ります。
出船 17:30頃 <鵜飼観覧船のりば>
船頭さんが船に乗り込み、干支船を先頭にして順番に8隻の月船が船出します。

顔見せ 18:00頃 <鵜飼観覧船のりば>
『こよみのよぶね』が長良橋をくぐり下流から上がってきます。
お山下楽屋 18:30頃 <お山下川原>
1から12の数字行灯を載せた月船と干支船がお山下の川原で時を待ちます。
時の流れ 19:00~20:00 <長良川右岸プロムナード>
太鼓の音とともに1月船から順番に『こよみのよぶね』が上流から流れてきます。
「鵜匠の家 すぎ山」前の川岸に1隻ずつ接岸し、巫女による「こよみっけ!!」引き渡しの式が行われます。その後、全ての月船が金華山を背景に一列に並ぶ「総がらみ」で締めくくります。
お見送り 20:00頃
花火とともに1月船から12月船、その年の干支(2025年は巳)を乗せた干支船が長良橋の下へと還って行きます。今年を振り返りつつ、未来へとつながる時を告げます。
楽日初日 20:30~21:00頃 <鵜飼観覧船のりば>
終わりは始まりのしるしです。流れついた数字行灯を岸に上げ、骨組みの竹から和紙をはがして解体し、次の姿へとつなぎます。
◆『こよみのよぶね』の始まり◆
『こよみのよぶね』は今から20年前、アーティストである日比野克彦さんの呼びかけで始まりました。
立ち上げメンバーとして関わり、後に岐阜県観光交流推進局長を務めることになる古田菜穂子さんによると
最初の話があった時はまだ具体的なアイデアはなく、日比野さんの岐阜県美術館での展覧会を機に「岐阜市民の心のふるさとである長良川を活用して冬の祭りのようなものを作り上げたい」と話があったそうです。
後日「千年続く祭りに」というアイデアスケッチを日比野さんから見せてもらった時は心底ワクワクしたとのこと。
今まで自分が取り組んできた美濃和紙や岐阜提灯などを活用した夏の ”あかり灯ウォーク” の要素を取り入れていただいたアイデアで「さすが、日比野さん」と思ったと古田さんは語ります。
その際、日比野さんからは「お金を集めたいんじゃなく、みんなが自主的につながって活動することを目指したい。だからお金は集めないでほしい」との言葉があり 「ではどうやって事業を実現していくのか」 を話し合う内に、半数以上のメンバーが去って行ったそうです。
その後、残ったメンバーで仕組み作りから、アート活動の場探しと場づくり、『こよみのよぶね』という今まで誰も目にしたことのない新たなプロジェクトをどう作り上げていくのか?
例えば
行灯に使う竹はどの竹を使うのか?
短冊に使う和紙はどうするのか?
色彩は?
船にどのように取り付けるのか?
メンバーをどのように募集するのか?
など、やるべきことは無数にあり、それらをひとつひとつ解決していったそうです。
猛暑や極寒の中、ひたすら作り続けるなどキツイけど楽しい毎日であったと古田さんは振り返ります。
川で行う祭りということで「これは神事である」との思いから、長良天神神社に祈祷をしていただくように依頼をし、川では鵜飼観覧船を使用することから岐阜市や船頭さん達にも協力を要請したそうです。
更に『こよみのよぶね』を継続事業にするために行政と市民参画型の実行委員会を作る話し合いをしました。
実行委員長は長良川左岸のホテルパークの社長に引き受けていただくよう協力を仰いだと古田さんは語られます。
当時は「こよみっけ!!」(和紙の短冊のこと。詳しくは後述)を作るため、一枚一枚スタンプを押す作業もこなしたと古田さんは当時を懐かしまれます。
◆千年続く祭りを夢見て◆
数々の苦労を経て第1回目の『こよみのよぶね』が開催され、立上げから20数年の月日が流れました。
20数年の間には数々の出会いと別れがありました。
中でも立上げ時の同志の一人が病気で亡くなられたことは一番辛い別れだったそうです。
一方で学生だったメンバーが結婚し、親になったこと。当時は幼かったメンバーのお子さん達が成人し、社会人として世界を飛び回っていることなど嬉しい変化もあったと言われます。
古田さん自身は、県の観光交流推進局長(2009年 〜 2013年)になったことで、県の支援も行えるよう体制を整えた上で、自らへの利益誘導にならないようにと、実行委員会を離れられました。
そんな古田さんですが
『こよみのよぶね』が私の毎年の定例行事であることに変わりはありません。あっという間の20数年でしたが、毎年冬至の日には、そんな時のめぐり、時の流れを感じながら静かによぶねを見守っています。
「千年、続く、祭りを夢見て。」
◆まずは「こよみっけ!!」の記入から◆
私も毎年『こよみのよぶね』を楽しみにしている一人です。
楽しみの始まりは12月初旬の「こよみっけ!!」の記入から。
「こよみっけ!!」は月ごとの出来事や想いを書き込む和紙の短冊です。
書き込むことにより一年という「時」を振り返り、過ぎた時間を想うことができる仕組みです。それは一年の「始まり」と「終わり」を感じることにつながります。
書き終わった「こよみっけ!!」にもう一度目を通す時、過ぎ去った時間に対する想いが改めて感じられます。
12月になると「こよみっけ!!」の記入スペースと投函箱がぎふメディアコスモスと岐阜市役所に設置されます。
投函された「こよみっけ!!」は当日の「こよみっけ!!」引き渡しの式で船に積まれます。
何ごともうまく行かず苦しかった年は、書きたいと思える出来事も少なく、枚数も少なくなります。
逆に一年を通して好調だった年は「あれも、これも!」と「こよみっけ!!」の枚数は多くなります。
書ける出来事が少ない年や嫌な思い出が残ってしまった年は、正直ちょっと暗い気持ちになり落ち込みます。
しかしながら敢えて嫌な思い出を「こよみっけ!!」に書いて水に流すということも私はしています。
そう、例えば彼氏に一方的に別れを告げられた辛い思い出とかをね。

◆楽しみ方は何通りも◆
『こよみのよぶね』は見る場所によって印象が違います。
左岸の長良橋より上流のホテルパークの辺りは人が少なく時の流れを静かにかみしめることができ、同じ左岸でも長良橋より下流の鵜飼観覧船乗り場付近は、船出を見物する人などで賑わい、活気に満ちた時の流れを感じることができるでしょう。
長良橋の上からは背後を通り過ぎる車の音を聞きながら、船が静かに川面を流れる幻想的な風景を眺めることができます。
右岸に行くと人が多く、こよみっけ!!引き渡しの式が行われるすぎ山の前は、正面に金華山と岐阜城が見える絶好のスポットです。
家族連れも多く、時の流れをかみしめるには少々周りの雑踏が気になりますが、そんな時はちょっとだけすぎ山から離れると静かな空間に身を置くことが可能です。
毎年新たに制作される行灯は、いくつかの団体によって作られます。
例えば岐阜県美術館では美術館のアートコミュニケーター「〜ながラー」のメンバーによって干支行灯が作られています。ワークショップに参加することによりメンバー以外でも制作に携わることができます。
もちろん当日の『こよみのよぶね』見物だけでも十分楽しめます。
一人静かに時の流れをかみしめたい
家族や友人とワイワイ過ごしたい
「こよみっけ!!」に一年の想いを書いてみたい
行灯を作ってみたい
『こよみのよぶね』の楽しみ方は人それぞれ。
次回、第21回の『こよみのよぶね』には皆さまもぜひお気に入りの楽しみ方を見つけるために出かけてみてはいかがでしょうか?
毎年『こよみのよぶね』が終了すると日没が少しずつ、少しずつ遅くなっていくのを実感します。そして気が付くと春はすぐそこに来ています。
暖かな春の陽射し
吹き抜ける夏の風
秋の紅葉を川面に映し
冬は凛とした空気を纏う
そんな季節の移ろいと時は、千年先の長良川にも、今と変わらず流れているのでしょうか・・・。
時の流れに想いを馳せつつ静かにペンを置くことにいたします。

<書き手>メディコス編集講座 第4期生 林千穂
メディコス編集講座とは、岐阜市の魅力的な情報を集め・発信する担い手育成を目的として岐阜市が開催している講座であり、令和7年度の第5期までに103名が終了し、市民ライターとして活動しています。





