連続トークイベント「みんなのひとりと」。第3回のゲストにお招きしたのは、「かかみがはら暮らし委員会」のコミュニティ部門で初代委員長を務めたオゼキカナコさんです。

一般社団法人かかみがはら暮らし委員会は、各務原市の公園「学びの森」内のカフェ(KAKAMIGAHARA STAND)の運営や、市主催のイベント(各務原マーケット日和)の企画ボランティアといった活動をするとともに、委員会内のコミュニティ活動として、暮らし委員会のメンバーが企画して開催するイベントや、誰でも参加できる「寄り合い」や「部活動」など、次々とまちを楽しむ企画を実現させています。
今回は、コミュニティ部門の初代委員長を務めたオゼキさんから、暮らし委員会のこれまでの活動や、コミュニティとして大切にしていること、やりたいコトを実現する場づくりについてお話を伺いました。

暮らし委員会が生まれたきっかけは、市のボランティア。
各務原マーケット日和の企画ボランティアに参加した、職種の違う5人のメンバーが集まり、当時市が募集していた“公園内のカフェの運営事業者”に手を挙げるため、かかみがはら暮らし委員会が設立されました。
その後、運営事業者に選ばれカフェの運営が始まり、“文化の発信と人々の交流の拠点”というカフェのコンセプトを実現するため、寄り合いや部活動などのコミュニティ活動を起こし、仲間が集まり始めたそうです。
しかし、動き始めたものの、次第にうまくいかなくなったとオゼキさんは振り返ります。
暮らし委員会を立ち上げた理事メンバーがコミュニティを運営していましたが、思いの違いによる脱退や、集まってくれた仲間と上下関係が生まれてしまったりと、活動がうまく回らないことも。楽しくて始めたのに、仕事のような状況に疲弊していた理事たちへ、「みんなでやりたい」「みんながフラットに意見を出し合える場にしたい」という仲間たちの声が上がります。
そこで、暮らし委員会は大きく舵を切ります。これまでの理事制度を解散して仲間は横並び。その中から、コミュニティ活動のリーダーとなる委員長を選挙で選ぶことに決めました。その初代にオゼキカナコさんが就任してから、仲間と共に考え、目指すことや大切にすることを明文化していきました。

新体制でスタートした暮らし委員会には、カフェの運営やイベント、部活動、SNS発信など、それぞれがやりたい活動を仲間と共に進めていく流れが出来ていきます。コミュティ制度を始めた時の約20名から現在は100名を超える規模にまでメンバーが増え、活動の輪を広げてきました。
また、SNSでの広報や、メンバー同士の対談など、楽しんで活動している様子を積極的に発信しています。これにより、「各務原のイベントオシャレだな」や「いいお店多いな」など、いい印象を持ってもらえ、実際に引っ越してきたひともいるそうです。そんな活動の積み重ねが結果的にまちづくりになっていると、オゼキさんは笑っていました。楽しんでいるひとの周りにひとが集まり、楽しいの連鎖が起こっています。

暮らし委員会が特に大切にしている、「安心感」という言葉がとても印象的でした。
コミュニティを心理的に安心できる環境にしておけば、仲間たちが自然とやりたいことを発言したり、悩み事を相談したりしやすく、心地の良い場所としてひとが集います。
例えば、誰の発言も否定しないとか、日々のコミュニケーションに使っているチャットツールにメンバーから書き込みがあれば積極的に反応することをみんなに呼びかけたり、ツールが上手く使えない方にマンツーマンで使い方を教えたりと、暮らし委員会のメンバー同士による小さな積み重ねが安心感を育んでいるようです。
他にも、メンバーそれぞれの貢献度をアンケート形式で集めることも。「今後の活躍を期待しているひと」「話してみたいひと」など、今活躍しているひとだけでなく、みんなの名前が上がりやすい項目がいくつもあり、より多くのメンバーが「ここに居て良かったな」と実感できるような工夫がなされています。
聞き手からの、「自分の居場所と認識するには、役割を持っていないと居心地の悪さを感じることもあるのでは?」という質問に対し、オゼキさんは「居るだけで価値があると考えている」と答えてくれました。いろいろなひとたちがいることで自分とは違う意見や客観的な意見をもらえるから、役割がなくてもその場にいる事に価値があると考えているそうです。

こんなにも多様性に溢れるコミュニティに、相当な熱量を持って関わっているオゼキさんですが、暮らし委員会の活動は趣味なんだそうです。
このままだと気持ち良くない状況を変えたくて、ちょっと強めの好奇心と共に地道に行動を続けていたら、なんとなくここに居れて良かったなと思える「居心地の良い場所」に辿りついてきたとのこと。
また、多くのひとと交流する経験からオゼキさんが気づいたのは、自分と違う考え方に触れることが学びになっているということ。いろんなひとがいるんだなと思えるキッカケをつくることが一番大事だと話してくれました。
満員御礼となった今回のトークイベント会場では、大きく頷くひとや、メモを取るひとも多く、
「コミュニティづくりの一つのカタチを知ることが出来た」
「今所属しているコミュニティをもっと楽しくするための沢山のヒントがもらえた」
という声もありました。
オゼキさんの考え方を知ったことがキッカケとなり、やりたいを実現できる居心地の良い場所を求めて、新たな一歩が踏み出せるひとが生まれることを願っています。