ゲストの小倉ヒラクさんは「発酵」という切り口から全国各地の、その土地ならではの風景を掘り起してこられました。
発酵とは、土地の文化や歴史そのもののアイデンティティだとヒラクさんはいいます。
例えば、塩漬けの唐辛子を雪の上にさらして麹などと混ぜて発酵させた「かんずり」は大寒の日に「寒ざらし」にすることで甘みを引き出す独特の製法で作られています。
雪の上に赤い花が咲いたような幻想的な風景はこの地方の冬の風物詩になっているそうです。
このように、1000年以上の歴史の中で「発酵」はその土地だけの風景や文化、味覚と強く結びついてきました。
豆腐の味噌汁に納豆に白米。特別じゃない、高価なものでもない、昔ながらの普通の食卓です。
でも不思議と毎日食べても飽きません。
それは、菌のバリエーションが非常に豊かで味に深みが出るからだとヒラクさんはおっしゃいます。
また、雷が田畑に落ちることによって発酵が進み、稲がよりよく育ちおいしい米がとれるという説があるのだそうです。
そして、昔から人間は作物がよく育ったことへの感謝をこめて神棚に発酵のたまものであるお酒をそなえてきました。
自然を超えた存在とのコミュニケーションとして『発酵』があったのだと大変驚かされる、興味深いお話しでした。
岐阜の発酵の風景についても存分に語ってくださいました。
鮎のなれ鮨は古くから長良川とともに生きる人が培ってきた、徳川家にも献上されてきた岐阜の食のシンボルの一つです。
発酵はかつて人がどのように生きたかの歴史であり、目に見えない菌たちの働きによって衰退していた土地や分断されたコミュニティがよみがえることもあるのだという言葉が印象的。
その土地土地の菌のささやきに耳をすませ、ローカルな発酵を掘り起こす旅をされてきたヒラクさんだからこそ話せる奥深い発酵の世界にお客さんも魅了されていました。
『発酵食品』は健康ブームで語られる1ジャンルにとどまらない、ローカルアイデンティティの象徴です。
今回のイベントはこの岐阜という地で主体的に暮らしを作っていくための『シビックプライド』について考える時間となりました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!