連続トークイベント「みんなのひとりと」。第2回のゲストにお招きしたのは、東海エリアを拠点に全国各地で子どもたちのキャリア教育支援を展開する株式会社ドングルズの代表取締役 松岡慎也さんです。今回は、メディアコスモス職員の長尾が聞き手となって松岡さんから「未来を生きる人づくり」をテーマにお話をうかがいました。
もともと技術科が専門の教員として16年間小中学校の教壇に立っていた松岡さん。子どもたちにモノづくりを教えたいという想いとは裏腹に、技術の授業時間がどんどん減らされる学校教育の現実を目の当たりにし、自分のやりたいモノづくり教育を実践するために、教員を辞めてキャリア教育支援の団体を立ち上げたそうです。
独立して最初に取り組んだのは、子どもたちにモノづくりの実践の場を提供するロボット工作教室やロボットコンテスト。「モーターを使って4つの紙コップをひっくり返す」をミッションに、子どもたちが1ヶ月かけて考え、作り上げたオリジナルのロボットを実演する様子が会場で紹介されました。その仕掛けはまさに十人十色。モーターの駆動と持ち上げるスコップの形状を見事に組み合わせたロボットが4つの紙コップを華麗にひっくり返すと、周りからは大きな喝采が上がります。学校ではできないこうした経験の中から、「楽しさ」を通じて、子どもたちの探究心・創造力を育むことが大切だと松岡さんは語ります。
もう1つ松岡さんが活動の軸にしているのがアントレプレナーシップ教育、いわゆる起業家教育です。その根底にあるのは、子どもたち1人1人が長所を見つけ、変化する新しい社会の中で自分にできることを掴んでほしい、という想い。小中学生が楽しみながら経済の仕組みを学ぶカードゲームでは、子どもたちが自分の長所を見つけるヒントとなるよう、欠かさずに適性検査を行っています。
(ちなみに、トークイベントの中で参加者の皆さんにもこの検査を体験していただきましたが、職業タイプで最も多かったのは「ルーティーン」の仕事。子どもでは圧倒的に「アート」の割合が高いとのこと…)
これからの時代、「長所を伸ばすことで短所を補うことだってできる」、子どもたちにそんなメッセージを届けています。
また、松岡さんが大切にしているのは、世代をつないで人材を育むこと。小中学生の学びの場に、あえて高校生や大学生にスタッフとして参加してもらったり、企業で働く大人にも参画してもらうことで、世代間の交流を促す仕組みを作りだしています。この背景には、憧れの大人との触れ合いを子どもたちが将来への夢や希望を抱く糧にしてほしいという願いや、企業の人たち自身にも将来を担う人材を社会全体で育む当事者になってほしいという想いがあるとのこと。
そして、話はトークの核心の部分に。AIやロボティクスの急速な進展を受け、私たち人間の仕事も含め、社会の有り様が大きく変わろうとしている中、これからの未来を担う子どもたちにとって、今、真に必要な学びとは…。松岡さんは、はっきりとした口調でこう語りました。「考える力を持ち、行動できる人を育てることです」。AIもロボティクスもデジタル化も確かにこの時代の特徴かもしれない。ただ、これまでも時代は常に変わり続けてきていて、どの時代も先が見通せない世の中を切り拓いてきたのはクリエイティブな発想を持った人。子どもたちには自分の考えと行動次第でどんな未来だって創り出せると伝え続けていきたい。軽快な語り口の中にも松岡さんのメッセージには熱い想いが込められていました。
「未来を生きる人づくり」。それぞれ立場は違えども私たち1人1人が、その当事者となり、未来への希望を共有しながら、熱量を持って子どもたちと関わっていくことの大切さ。松岡さんの話を通して、そんな気づきを得るトークイベントとなりました。