岐阜を鳴らす…?街の音で地元の躍動を伝える音楽を作ってみる

岐阜の伝え方を考える
岐阜の魅力を伝える。このテーマで自分が話せることはなんだろうと考えていた時、講師の方から音楽を作ってみても面白いのではないかというご提案をいただいた。
なぜ急に音楽…?というと、簡潔に紹介するが私は岐阜の街で暮らしながら日々音楽活動をしているからだ。
私は普段からあらゆる音楽を好み多様な製作方法に手を出しているのだが、その中でフィールドレコーディングと言われる環境音を録音する作業も好きで、定期的に日記をつけるような感覚で行っている。(不健康なのでアウトドアして日光を浴びる目的もある)
構想を練っていた時その存在を思い出し、日常音を使って岐阜を表現することが一番自分らしさが出せるのではと思いつき、今回の曲を製作することにした。
主にお届けしたいのは音であり、作品を早速聴いていただきたいところだが、この曲は一聴して”わかりやすい”とは言い難い。そこでここでは製作背景、聴きどころなどを先に紹介する形をとり、なるべく興味を持っていただいてからご試聴いただく構成を目指すことにする。
どんな音楽で、どう作られていくのか
完成した曲はミュージックコンクレートというジャンルの作品である。このジャンルは自然界や日常生活の音を録音し、それを編集や加工によって新しい音楽作品に変えるという実験的なもの。こちらがその参考となる代表的な作品だ。
聴いていただくと、やはり難解な音楽と感じるのではないかと想像する。このような音楽がどう作られていくのか、私の例で恐縮だが、製作の様子を紹介していこう。
まずは一般的にいうところの楽器、音楽の元となる音探しと録音を行う。下写真のレコーダーを持ち、ただただ街を録音しながら徘徊し、ぐっとくる音を探していく。この作業には大きな問題がある。とにかく不審な目で見られやすいのだ。そして生憎この高精度のマイクを使ってヘッドホンを着けていると自分を訝しんだ声がよく聞こえてくる。世間の目をどれだけ気にせず過ごせるかという、実力を問われる時間となる。
こうして打ち勝った先に録れた音を家に持ち帰り、それらをパソコンで編集していく。
編集ソフトに好みの音をいれていくのだが、今回は過去に録り貯めた多数の音から選んでいき、特に好きな音に絞っていった。
積雪した日に録った雪を踏み締める音(冒頭から聴くことができる音だ。この音は色々な加工をし、複数で使用した。)、6秒あたりから聞こえはじめる長良川周辺、雨上がりの雨樋から落ちていた美しい水滴の音。55秒からの音は金華山を登山中に流れていた水のせせらぎの音だ。水の音が複数含まれているが、水といえどあらゆる表情を持っている。その違いを表現することは面白いと感じたので採用した。
こうして集まった音を加工していき、幻想的でリズミカルで、湧き上がる熱をまとった音像を作りあげていった。
ただの田舎ではない岐阜の奥深さ
ここからはこの曲で描きたかったものを説明したい。岐阜といえば一般的には長閑で癒される自然豊かな街、という印象があるかと思う。それをそのまま素直に音にすることも検討したが、私は自分が見ている主観的で狭い岐阜の角度をあえて表現することにした。「自分が作る意味」にこだわりたかったのだ。
私は自分の確固たる「好き」を持つ人が好きだ。そういった人たちとこの街でもたくさん出会ってきた。その周辺が生み出すイベントやお店に足を運び、そのたび沸々と岐阜の一角で湧き上がっているアツさを目にして、多くの刺激をいただいて生きてきた。そんな体験から抱いた感情を音にしたいと思い、『energy』と名付けた曲を作った。
ここまでお付き合いいただけた方に感謝をお伝えして、最後にぜひお聴きいただきたいと思う。(文末にリンクを貼らせていただく。)
この記事を通して岐阜の魅力、音楽の面白さと奥深さを少しでも感じていただけたら幸いだ。まだまだ私も知らない岐阜の魅力があると、このメディアコスモスの方達との出会いでも猛烈に実感している。(みなさんが書いている他記事も本当に面白いのでぜひチェックしてほしい)
素晴らしい場所や人との出会いを楽しみにこれからも岐阜での時間を過ごしていきたい。
<書き手>メディコス編集講座 第4期生 近藤圭晃
メディコス編集講座とは、岐阜市の魅力的な情報を集め・発信する担い手育成を目的として岐阜市が開催している講座であり、令和6年度の第4期までに83名が終了し、市民ライターとして活動しています。