2022.05.26
岐阜の街でハーモニーを奏でよう
◆開演
私が「歌うこと」に興味を持ち始めたのは、今から5年程前になる。東京へ単身赴任をした際に人前で話すことが多くなったため、ボイストレーニングを受けたのが始まりだ。レッスンでは何故か「歌を歌いなさい」と指導され、最初は恥ずかしく、照れながら歌っていた。トレーナーの先生になぜ歌なのか理由を聞くと「発声の練習になるから」と説明してくれた。その時「それなら岐阜に戻ったら合唱団に入ろう」と心に決めたのだ。
◆岐阜には戻ったが・・・
4年間の単身赴任が終わり岐阜に戻ったが、すぐに合唱団には入団しなかった。「初心者なんて受け入れてくれるのか」「人前で歌うなんて恥ずかしい」…いろいろな葛藤の中で、気が付けば新型コロナウィルスの流行…「このままでは一生歌えない」。今思うと、このことが逆に冷え切った心に火をつけたようだ。そして、練習日時や初心者受け入れなど条件に合う合唱団を選び、やっとのことで門を叩いた。
◆ 楽譜が読めない!
見学期間を経て、正式に入団を申し込んだ。私が入団したのはソプラノ、アルト、テノール、バスの混声合唱団。「こんな時期に入団するなんて」と歓迎を含めた意味で奇妙がられたが、それよりも各パートが一つになった時に奏でる美しいハーモニーにすっかり魅了されてしまった。しかし私は「楽譜が読めない」「腹式呼吸ができない」「巻き舌ができない」など、ないないづくしの素人。練習ではたびたび他のパートの音に引っ張られ、迷子になることもしばしば。しだいに週一回の練習も億劫に…「やると決めたなら、やりきらねば」
◆アラフィフ、本気になる
休みの日に誰もいない長良川の河川敷に車を止めた。ドレミ・・・と書き込みをした楽譜を元に、練習時の録音に合わせて歌い始める。更に注意の必要な音をスマホのピアノアプリで確認しながら、教えて貰ったラテン語の発音と一緒に何度も合わせていく。やっと週一回の全体練習と自己練習を繰り返しながら、1月の定期演奏会に向けて走り出した。そう、本気になったのだ。
◆初めての定期演奏会
定期演奏会は「OKBふれあい会館サラマンカホール」で開催された。「こんな格式の高い場所で歌うなんて・・・」。練習では緊張で心臓の鼓動が早まり、息が続かない…しだいに開場して客席が徐々に埋まっていくのを見て、初めて身につける蝶ネクタイのボタンがうまくはまらない。ついに開演の時間だ。1ステージ、2ステージ、3ステージ、アンコールと15曲を無心に約1時間45分で歌い切った。私を含め、アンコールに応えた後の団員たちの顔は何とも言えない高揚感に満ちていた。
◆誰かの為に
岐阜県合唱連盟のホームページを見ると、岐阜県下では一般の合唱団だけでも約37もの団体が活動しているようだ。新型コロナウィルスの影響で演奏会の機会はずいぶん減ったようだが、それでもこれだけの合唱団が歌えば、天に願いも届くのではないだろうか。発声という機能を高めるのもいいが、歌を歌うことでもっと違う何かができるのではと考えた。「そうだ。いつかは自分のためではなく、誰かの為にハーモニーを奏でたい!」…新しい目標を叶えるのはまだまだ先になりそうだ。
<書き手>メディコス編集講座 第1期生 石田モトキ
メディコス編集講座とは、岐阜市の魅力的な情報を集め・発信する担い手育成を目的として岐阜市が開催している講座であり、第1期となる令和3年度には23名が修了し、市民ライターとして活動しています。