門外不出の自家製ソースが決め手。岐阜市、伊奈波神社参道にある老舗洋食屋「あじろ亭」で味わう自分だけの静かな時間。 |ブログ|岐阜市シビックプライドプレイス

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門外不出の自家製ソースが決め手。岐阜市、伊奈波神社参道にある老舗洋食屋「あじろ亭」で味わう自分だけの静かな時間。

門外不出の自家製ソースが決め手。岐阜市、伊奈波神社参道にある老舗洋食屋「あじろ亭」で味わう自分だけの静かな時間。

旅行は食事で決まると言われる。
検索して行ってみたらイマイチ。もっと魅力的なランチがあったかも…という経験は、旅先ではよくあることかもしれない。ここでは、岐阜市の「ここはいいかも!」と感じた素敵なお店を紹介したい。

「岐阜市」「観光」で検索すると、金華山と岐阜城、ぎふ長良川の鵜飼、長良川温泉などがヒットするが、 旅行は地元の神社でお参りをしてから始めると道中の安全を見守ってくれるかもしれない。

JR岐阜駅、名鉄岐阜駅から岐阜バスで約10分。「伊奈波通り」バス停で下車すると目の前に伊奈波神社の参道がある。
交通アクセス | 伊奈波神社

伊奈波神社の境内に入る鳥居。休日と七五三詣が重なり参道には車があふれていた

レトロな看板に誘われて

お参りを終え、旅の安全を祈願したら、ちょうどお腹がすいてきた。参道なら何かあるだろうと高をくくって歩いてみる。少し行くと左手にお店が見えた。ここしかないだろうと思わせるレトロ感あふれる素敵なお店。個性的な字体で「あじろ亭」と書かれた看板に目を惹かれた。

しだれ桜並木の参道沿いにあるあじろ亭

一階がレンガ造りで、二階が白壁のさっぱりとした洋館。お店に入り、すぐ左にある四人掛けのテーブルに座る。席は参道に面しており、行き交う参拝客を眺めることができる。店内は静かで、他のお客さんの話し声がする程度だった。

南側にある窓辺の席。テーブルに落ちる木漏れ日がゆったりとした時間の流れを作り出していた

このあじろ亭には、BGMやテレビ、雑誌といった時間をつぶせるものは見当たらない。いつもなら携帯を手に取り、つい意味もなくスクロールしてしまうところだが、今回はその習慣をぐっと堪える。店内のレトロな雰囲気や、風に揺れて微かに聞こえる桜の葉音も、今しか味わえないような気がしたからだ。

食事が届くまでの間、参道を行き交う家族の会話を想像してみた。千歳飴を大事に持って楽しそうに笑っている赤い振袖姿に心がなごみ、幸せをお裾分けしてもらった気持ちになった。何もない時間を埋めるのは、自分の内側から生まれる感覚だけ。そんな過ごし方が似合うお店だ。

明治時代に海兵のコックさんから伝授してもらった「高等ライス」

 

”メニュー”という言葉が浸透する前から使われていた”献立表”という言葉を採用している

テーブルにあるのはメニューではなく「献立表」。お店のイチオシは”高等ライス”と”チキンミヤベ”とある。どちらも聞き慣れないが、今回は高等ライスを注文した。

高等ライスとは「目玉焼きの乗ったビーフカレーライス」。

当時、贅沢品だったカレーライスの上に、これまた高級品だった玉子を乗せたのが名前の由来だそうだ。(今回食べられなかったチキンミヤベ(もしくはチキンミヤベヤ)とは、現在東海地方にある創業100年を超える3店舗のみが提供する料理。ぜひ次回は注文したい。)

目の前に届いた高等ライスは、スパイスが効いた刺激的なカレーではなく、野菜の甘みがしっかり溶け出した優しいカレーである。小麦粉から調理する伝統のレシピは、明治時代に海兵のコックさんからの口伝によるもの。時代を経ても変わらず受け継がれてきた逸品だ。

高等ライス

自家製ソース

ここでの食事に欠かせないのが、小瓶に入った門外不出の自家製ソース。見た目は濃くてしっかりした味付けのソースのように思える。近くに座っていた一人の淑女から、このソースは何にでも合うよ、と教えてもらったので、高等ライスにかけて、もう一度口に運ぶ。「なるほど、そうきたか!」という唯一無二の味に変わった。材料は教えてもらえなかったが、野菜や果物の甘みと酸味をベースに醤油などで味を引き締めたように感じる。

あじろ亭の高等ライスは、この自家製ソースをかけて完成するといっても過言ではない。ぜひ食べて欲しい。

グラスに水を注ぎに来たのは、ひとあたりの柔らかな「あじろ亭」3代目。聞けば、厨房を守るのは彼女の母親で2代目88歳のシェフだった。会計時にレジ後ろから姿を見せてくれたシェフは、小柄で可愛らしい印象の女性。つやつやの頬をピンクに染めて微笑んでいた。

歴史を背負っているだけあって、言葉から誇りが伝わってくる。高等ライスの由来やお二人で切り盛りしていることなど、こちらの質問に快く丁寧に答えてくれる、懐の深い方々だった。

自分だけの素敵な時間を味わう

店頭にあるタペストリーは季節によってかわる…かも

食事を終えて振り返ると、すっかり心が緩んでいた。店内の落ち着いた雰囲気や、身体にやさしい味付けがそうさせたのだろうか。
久しぶりに親友の家を訪れたような、穏やかで優しい気持ちにも似ていた。

 

事前に検索をして旅を進めるのもいいけれど、たまにはご縁を感じて「自分だけの静かな時間」を味わうことも、人生の豊かさには大切だ。

雪が降るころ、願掛け参りとセットでまた訪れようと思う。
「素敵な母娘がずっと幸せでありますように。」
そんな一期一会も噛みしめながら。

取材協力:あじろ亭(岐阜市伊奈波通1丁目65-3)


※この記事は、「メディコス編集講座」第5期の講座の一環として受講生が制作しました。
 a班執筆:岩渕智康、江崎英樹、西川治余、幅めぐみ、堀田春将、前田利之、三輪佳久

メディコス編集講座とは、岐阜市の魅力的な情報を集め・発信する担い手育成を目的として岐阜市が開催している講座であり、令和7年度の第5期までに103名が修了し、市民ライターとして活動しています。