アートで広げる、岐阜の可能性とクリエイターの未来 |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.34

アートで広げる、岐阜の可能性とクリエイターの未来

児玉 宗之さん

esora美術研究所 代表
アート留学センター 代表
esorabridge 代表

1983年 岐阜市生まれ

加納高校美術科を卒業し、大学・大学院で日本画を学ぶ。その後加納高校美術科で数年間、非常勤講師を務めながら、2011年に「esora美術研究所」(美大・芸大専門予備校)を開校。日本画専攻、デザイン専攻、油画専攻などのコースを設置しており、東京藝術大学をはじめとする美大・芸大の合格者を輩出。現在は、アメリカやイギリスなどへの留学をサポートする「アート留学センター」の運営や、岐阜聖徳学園大学で教育学部の講義を受け持つなど、さまざまな形で美術教育に取り組む。生徒が多様にアートを学べるような授業を行い、将来クリエイターとして活躍できる人材を育てている。

現在のあなたの活動について教えてください

― esora美術研究所(以下:エソラ)を開校したきっかけはなんですか。

大学生時代、誰かのために自分ができることはなんだろうと考えたときに、「岐阜に美術の勉強ができる場所をつくってみようかな」と思ったんです。自分が加納校生だった頃は、同級生のほとんどが受験のために県外の大きな美術予備校に通っていたので、絵を学べる環境を岐阜に増やしたいと思ったのがきっかけです。

 

― エソラでは、どのようなことを学ぶのでしょうか。

美大・芸大受験には、共通テストに加え各専攻別の実技試験があるので、生徒はデッサンや立体造形、絵画表現などの技能を身につける必要があります。講師が課題文を提示し、生徒はそれに応えるように設定されたモチーフを描いて講評を受ける、というのをひたすら繰り返しながら学んでいきます。

 

― エソラならではの取り組みがあるとお聞きしました。

生徒には、教室や岐阜では普段できないような経験をたくさんして視野を広げてほしいと思っているので、そういったきっかけになるような機会をなるべく設けるようにしています。

年度始めには、東京の美術館やギャラリーを全専攻の生徒と講師が一緒に巡るツアーを開催し、秋には専攻別の鑑賞ツアーを行います。また、夏期講習期間には、多様なジャンルのアートについて、鑑賞の面白さを伝える講義やワークショップなどのイベントを企画しています。

東京や石川、大阪などの遠方に足を運び、プロの作品を自分の目や体で実際に鑑賞、体感することが、作品づくりをより良くすると考えています。生徒には、自分の学ぶ分野をより深く知り、高い目標を持って制作に取り組んでもらえたら嬉しいです。

 

― お仕事で大切にしていることはありますか。

受験のゴールを“大学合格”にしないことです。いろいろな選択肢からきちんと自分の夢が叶えられる選択をすることが、生徒にとっての本当の幸せだと考えています。生徒1人ひとりと真剣に向き合いながら進路を一緒に考えられることは、僕にとってもものすごく幸せなことです。

そして、講師たちには、おすすめの作家や実際に見て良かった展示、場所などを、積極的に生徒に共有してもらうようにしています。講師が心から美術、そしてアートを面白がっている姿を見せることで、生徒も自然と惹き込まれ、積極的にアートを楽しむようになっていくんですよね。受験のためだけの指導ではなく、“美術の魅力”や“アートを楽しむこと”を伝えていくよう心掛けています。

 

― 卒塾後の生徒の活動について教えてください。

多くは美術系の仕事に就職をしています。たとえば広告代理店や、グローバルコンサルティング会社、ゲーム会社、化粧品メーカー、自動車メーカーなど、おそらくみなさんがよく知っているであろう企業で活躍されています。美術のスキルを活かして社会に貢献できる場ってかなりたくさんあるんですよ。

また、個展を開くなど、作家活動を頑張っている子もいます。生徒の活躍は本当にすごくうれしいです。

 

― お仕事でやりがいを感じるのはどんなときですか。

1つ目は、生徒がずっとできなかったことを習得したときです。絵をつくりあげることを言葉で説明するのはとても難しいのですが、僕の言っていることを本質的に理解できたことが絵から伝わってきたときは、とても達成感があります。

2つ目は、受験の結果が出たときです。もちろん、受験した全員が良い結果を得られるわけではありません。ですが、惜しくも合格に届かなかった子が、つらいなかでもきちんと結果を受け止め、これまで培った力や自分の成長を実感し、次のステップに繋げている姿、表情を見ると、すごく感慨深いです。その子にとって確かに意味のある一年だったんだなと思いますし、やりがいを感じますね。

これからの野望(目標)について教えてください

最近は県外からエソラに絵を学びに来てくれる子もいます。なので、校舎を増やし、美術を学べる場所をもっと岐阜に広げていけたらいいなと考えています。

また、これまではクリエイター側の支援をしてきましたが、世間にはクリエイターが作ったものを“楽しむ側”の人のほうが多いと気づいたんです。だから、みんなが今よりもっとアートやデザインに対して「面白いな」って感じられる流れをつくることができれば、きっとクリエイターの活躍の場も広がるのではないかと考えていました。その一歩として、アートの“鑑賞”をサポートするサービスができないかと検討中です。たとえばスタンドバー併設のアート鑑賞を楽しめるスペースや、アーティスティックなお洒落空間でドリンクを飲みながら勉強ができるスペースなど、だれもがアートをカジュアルに楽しめるような新しいスポットを岐阜につくってみたいです。

あなたが考えるシビックプライドとは

― 児玉さんにとって岐阜のまちはどんなところですか。

生まれ育った場所なので、理屈なく岐阜が好きですね。ただ、学生時代は「岐阜には何もない」って思っていました。でも、他県や海外にたくさん行くようになって、ほかのまちを知れば知るほど「岐阜っていいじゃん!」って思うようになったんです。食べ物がすごく美味しいし、空気もきれいだし、人は穏やかで、どこに遠出するにもアクセスが良くて、すごく住みやすいところですね。

 

― 児玉さんが感じる岐阜のまちの面白さは何ですか。

岐阜には老朽化したビルや土地など、利用されてないスペースが多くありますよね。そういうところをうまく活用すれば、まちのいたるところで、いろいろなことを楽しめると思うんです。まだ見ぬ可能性が岐阜にはあって、そこがこのまちの面白さだと思っています。

そして、このまちには自営業者がものすごく多いですね。おそらくまち全体が“クリエイティブ”に対して、無自覚に能動的であり、許容的なんだと思います。何か新しいことを始めようと思ったときに挑戦しやすいまち。岐阜のそういうところがすごく好きなんです。美味しい料理屋やユニークな洋服屋など、個性的なお店がたくさんある。シャッター街をいろんなアイデアで盛り返そうとする人がたくさんいて、まさにクリエイター魂あってのことだと思います。そんなまちで暮らしていけることに喜びを感じますし、クリエイターを育てていく活動ができていることにとてもワクワクしています。

 

コメント

― みなさんにメッセージをお願いします。

多くの人は“美術”や“アート”って言葉を聞いたときに、一歩引いてしまう人が多いと思うんです。「自分には分からないから」って。でも実は、みんなちゃんと興味があるし、普段楽しんでいるはずなんです。ファッションだったりインテリアだったり、人によっては車、アクセサリーとか。そういうのを楽しむマインドって誰しもがきっとあるんじゃないでしょうか。僕はこの道に飛び込んでみてすごく面白かったので、ぜひみなさんともアートの楽しさを一緒に見つけていきたいし、共有していけたらうれしいです。

 

取材日 2025/11/20

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