クラフトビールがつなぐ人とまち |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.16

クラフトビールがつなぐ人とまち

平塚 悟さん

岐阜麦酒醸造代表
医療関係会社営業職

1980年 岐阜県生まれ

製薬会社の営業職として勤務する傍ら兼業としてクラフトビールづくりを始める。2020年6月に法人を立ち上げ、岐阜市初のブルワリー(ビール醸造所)を開設。2022年3月には岐阜市伊奈波通りに空き店舗をリノベーションしてビール醸造所兼バー「Tap Room YOROCA(ヨロカ)」をオープン。クラフトビールを通じて「岐阜をもっと楽しく!」を合言葉に地域に根差した新しいチャレンジを続けている。

    1. 現在のあなたの活動について教えてください

― 兼業でクラフトビールづくりを始められたきっかけを教えてください。 
もともと転勤の多い仕事をしていて地元とのつながりをつくりにくい環境にあった中で、勤めている会社が会社外の学びや人間関係づくりを推奨していたこともあり、何か岐阜のまちや地元の方との関わりを持てるようなことをしたいと思うようになりました。そうした中で、地元とつながる、或いは技術・ノウハウをシェアするという要素の大きいクラフトビールに興味を持ったのです。クラフトビールの業界はお酒業界全体の中ではまだまだニッチなものです。なので、それを醸造するブルワーは、自分ひとりでやりきるというより、みんなで協力・協働して学びあいながらビールをつくっているところが特徴なんです。また、岐阜のまちでは色んな盛り上がりが起きてきているのに、ブルワリーがなかったところもクラフトビールづくりを始めた理由の1つです。

― ビールづくりにおける岐阜のまちの「地の利」とは何ですか。
ビールの一番の基本は水です。1つのブランドとなっている清流長良川由来の水を使えるのはアドバンテージです。40万人の人口規模を誇り、かつ中流域に位置する都市の中に、これだけ良質な川の水が保たれているのは全国的にみても大きな強みだと思います。また、岐阜の良いところは市街地もありながら少し郊外に行けば自然や農地が広がっているところ。ビールを飲んでくださる消費者も多くいるし、地元で材料を調達することもできます。 

― 岐阜のまちや人とどのように関わってきたのですか。
2021年の3月に初醸造のビールのお披露目イベントを長良川うかいミュージアムで開催しましたが、その企画は長良川おんぱく、NPO法人ORGANさんのサポートがあって実現しました。また、伊奈波通りの新しい店が出来たのも、空き店舗を紹介してくださったORGANさんや株式会社岐阜まち家守さん、地域の皆さんの協力のおかげです。なので、まずは地元の方が一番のお客様だと思っています。
また、この場所は市外から岐阜を訪れ、川原町や金華山を歩いてきた方が帰りに寄ってもらうのにちょうどよい場所です。そうしたエリアと柳ケ瀬、メディアコスモスや市役所のあるつかさのまちなどの点をつなぐ一助にもなれたら嬉しく思います。クラフトビールを通じて岐阜のまちを知るきっかけにしていただけることを願っています。

  1. これからの野望(目標)について教えてください

瓶製品をもっと安定して供給できるようにしたいです。そして、「金華山エール」や「鵜飼レッドエール」といった岐阜の地にちなんだビールを金華山の麓や山頂で、また鵜飼を見ながら飲んでもらえるようにしたいと思っています。サーバーをうまく使って岐阜のまちの色んな場所で、雰囲気に合わせてビールを楽しめる環境づくりにも取り組んでいきたいですね。
あと、材料では岐阜の地のものを使ったビールもつくりたい。例えば、秋に向けて岐阜の柿のビールをつくってみたいと考えています。ただ単純に柿を使うだけではなくて、柿の良さを活かしながらビールにストーリーを込めて提供することで多くの人にその魅力を伝えていきたいです。

  1. あなたの考えるシビックプライドとは?

鵜飼や和傘などの文化、金華山や長良川といった自然など、岐阜のまちにはすごく良い素材が揃っています。一方で、それ自体に岐阜の人があまり価値を見出せていないように思います。自分もその1人でしたが、そこにちょっとでも関わったり、そこにまつわるストーリーを知ったことで、岐阜の良さがわかるようになってきました。自分のようなサラリーマンだったり、子ども、専業主婦、パートで働く人も含めたすべての人が、それぞれの時間の中で、もう少しまちづくりに関われる範囲で関わり、支えていくことができたら、みんながシビックプライドというか、まちの良さを感じていくことにつながると思います。

  1. コメント

何かにチャレンジしてみたいと考えている人は、ぜひ一歩、半歩でもいいから踏み出してみてください。自分自身、頭の中で考えているだけの時は何も変わりませんでしたが、勇気を出してブルワーに相談のメールを送るという小さな一歩を踏み出してみたら、自分も、周りの人も、そして見える景色まで変わってきました。また、もう1つの視点として、まちや地域の素材とうまく絡めないかなと考え、行動してみてはどうでしょうか。自分は、まちの中で行動し始めたことで色んな方からお声やお話をいただきました。そうした出会いによって、自分の頭で想像する以上のことが生まれ、今まで見えなかった新しい世界が広がっていくと思います。

取材日 2022/5/10

 

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