和紙に魅せられた和傘職人 |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.14

和紙に魅せられた和傘職人

田中 美紀さん

高橋和傘店 和傘職人 店主
一般社団法人岐阜和傘協会理事

1979年生まれ 岐阜県

岐阜市内で数少ない和傘職人の一人。大学卒業後、10年修業したのち独立し、和傘の製造・卸しを行う高橋和傘店をスタート。「和紙が楽しめる和傘」をコンセプトに美しい和傘を作成。エゴノキプロジェクトなど持続可能な和傘の生産体制をつくる為のプロジェクトや、和傘職人の後継者育成などにも取り組んでいる。

    1. 現在のあなたの活動について教えてください

— 和傘職人になった経緯を教えてください。
私は学生時代にスペイン語を学んでいて、海外にばかり目を向けていましたが、留学や旅行などで出会った現地の方が自分の国に愛情や誇りを持っているのがすごくうらやましくて、自分も生まれ育った岐阜にはどういうものがあるかを考えるようになったのです。もともと和紙に興味があったので、和紙に関わる工芸品を探してみようと最初に足を運んだのが和傘屋でした。そこで和傘に一目惚れをして、その場で弟子入りをお願いしました。

— 和傘の魅力ってどんなところですか。
和傘は基本的には実用品なのですけれど、一方で美しさを兼ね備えていて、そういう端々にある美しさと先人の工夫が、ずっと昔から変わらずに残っているのがすごく素敵で美濃和紙を最大限に楽しめるのも魅力ですね。私は和紙を楽しめる和傘を作りたいと思っていて、和紙そのものが持つ魅力を最大限に引き出すことができるよう意識して作っています。ずっと受け継がれてきた和傘の美しさや良さはそのままに何かを付け加えることで現代に合う和傘を作り、次へ繋げていきたいと思っています。

— 和傘生産の持続可能性について
今一番壁になっているのは材料と後継者の問題ですね。岐阜県立森林アカデミーの久津輪先生の呼びかけでエゴノキプロジェクトが始まって10年目になり、私も最初は単純に和傘が作れなくなってしまうという危機感で参加したのですけれど、エゴノキプロジェクトを通して、たとえば山とか里山に暮らす人たちが抱える問題も見えてきました。色んな立場の人たちが問題を共有し合い、それぞれ力を出し合って一つのプロジェクトを成し遂げていくことは、私にとってすごく充実感があります。単純にエゴノキを収穫するだけじゃなく、今後持続可能な体制をつくるためにどうしたらいいかを毎年考えていくうちに、勝手に使命感のようなものを感じるようになりました。エゴノキにこだわらなくても3Dプリンターを使って樹脂で作ればいいじゃないかとおっしゃる方もいるんですけれど、こだわらなくてはいけない部分、変わってはいけない部分はどの工芸品にもあると思うんです。私は長年培ってきたものを可能な限り継承していきたいと思っています。エゴノキプロジェクトが持続可能な里山利用の体制づくりや、子どもたちへの環境教育の一つのモデルとなったらいいですね。

※エゴノキプロジェクトとはー和傘の開閉に欠かせない部品「傘ろくろ」の材料である良質なエゴノキを持続可能な形で収穫するプロジェクト。岐阜県立森林文化アカデミーの久津輪雅教授の呼びかけで和傘を取り巻く様々な人が集まる。

  1. これからの野望(目標)について教えてください

私自身、和傘などをはじめ岐阜の良い所を知らないままこの世界に入ってきたのですが、岐阜に住んでいる人にとって和傘が誇れるものになればいいなと思います。そのために和傘をどんどん使用してもらったり、イベントなどで展示したり、いろんな形で和傘に触れる機会を増やしたいです。和傘は開く瞬間からその魅力が始まるので、雨の下や太陽の下で、実際に使ってその良さを実感していただきたいです。

  1. あなたの考えるシビックプライドとは?

岐阜はパッとしないように思えるけど、知れば知るほど良いと思う何かが見つかります。万人受けするわけではなく誰かにとってはすごく大切なもの、そういう奥が深い魅力は知ったもの勝ちですね。

  1. コメント

是非和傘を使っていただきたいです。環境の変化に左右されやすいので季節ごとに虫干しをしなければいけないし、雨の日に使った後は完全に乾燥させなければならないので手間がかかりますが、その分愛着がわくものなので、ぜひ手に取ってみてください。

 

取材日 2021/12/23

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