まちをアップデートし、次世代へ渡す |珍ちんな人|シビックプライドプレイス

interview

No.10

まちをアップデートし、次世代へ渡す

末永 三樹さん

一級建築士・ミユキデザイン代表取締役
柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社クリエイティブディレクター

1977年岐阜県生まれ

設計事務所勤務を経て2012年に岐阜市で「ミユキデザイン」を設立。2016年には「柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社」を仲間たちと共同設立し、クリエイティブディレクターを務める。「あるものはいかそう、ないものはつくろう」を理念に、建築的な視点を持って「まちをアップデートし、次世代へ渡す」ことを目指し、大小さまざまな設計、デザイン、企画・プロモーションなど包括的に考え実践する。一児の母。

    1. 現在のあなたの活動について教えてください

設計事務所をやっていますが、最近多いのはリノベーションですね。使われていないビルや空きテナントの新しい活用方法などを考えて提案し、デザインして使っていくということをしています。元々は建物のデザインが中心にありましたが、だんだん建物の中だけじゃなく、周りや場所自体がどう変わっていくかをイメージして、まち全体のことを考えるようになりました。公共空間に関わってランドスケープのデザインをしたり、場所の活用の実験をしたりとか。
その中で行政と関わる機会もあって、例えば、各務原市とは公園のリニューアル、美濃加茂市とは施設のリニューアルなどで単純に空間デザインだけじゃなく、子育て中のお母さんや家族にもっと利用してもらうにはどうしたらいいかという場づくりも含めてプロデュースしました。
岐阜市にも関わらせていただいています。例えば、シティプロモーション冊子「エエトコタント岐阜市2021」の制作をさせていただきました。ディレクションするにあたって軸にしたことは、観光的な要素が中心ではなく、岐阜市に実はこんなことをしている人がいるという事実を丁寧に若い世代に伝えることです。何にもないと思われがちだけど、本当は何にもないわけじゃないと気付くこと、それがシティプロモーションに必要じゃないかなと考えました。

  1. これからの野望(目標)について教えてください

「まちづくり」や「地域創生」という言葉が注目されるようになってから、自分たちの取り組みを気にかけてもらうようになったんですけど、自分の原点は変わっていないですね。自分がいるところは楽しい方が絶対に良くて、楽しくするには自分もやった方が良いなという思いです。それが他の人から見たら「まちづくり」という言葉に変わっているところがあるのかなと思います。まちに面白い人たちが集まってきたら良いなとか、働く若い人たちが楽しめる環境をつくりたいなと思ってやっています。
3年前に子どもが生まれてから、少しずつ価値観や大事にするものが変わってきました。仕事を中心とした自由な時間の使い方は子どもを主にしたものに変わりましたし、のんびりくつろいだり、ほっこりする場所が欲しいなと思ったり。自分が子どもたちのために何ができるのか、これから世の中がどうなっていくかはまだわからないけど、自分ができる限りのことをちゃんとできたと思えるようにしたいというのが今の目指すところです。


リノベーション中の店舗

  1. あなたの考えるシビックプライドとは?

シビックプライドは生きる知恵、楽しく生きる人間の知恵のようなものだと思うんです。言葉にすると「まちの誇り」のように感じるけど、それよりもむしろ「まちの良さ」に気付けることじゃないかな。「まちの良さ」を自分の中でちゃんと翻訳できたり落とし込めることが、シビックプライドなのかなと思います。
1つの場所だけじゃなくていくつあってもいい。私自身、今は岐阜市で暮らして仕事もしているけど、生まれ育ったまちは違って、そこに行けば自然と心が落ち着く、これもシビックプライドだと思います。旅行の時に感じるのもそうかな。動き回る観光というよりも、数日間暮らすように過ごすのが好きなんですが、風景を見たり散歩したりすると、まちのことが心に残るんですよね。
子どもの頃は気付かなかったことも、大人になってからいろんなものを見て比較して気付くことができたり、それを誰かに伝えたいと思った時に気付いたり。自分以外の外とのつながりで発見できること、それが私の考えるシビックプライドです。


ミユキデザインが入る「まちでつくるビル南館」

 

  1. コメント

岐阜のまちの中にはたくさん素敵なものが落ちていると思います。それはお店だったり、景色だったり、人だったり。それを発掘する楽しみがある。有名とか関係なく、自分がいいなと思うものがまちの中にいっぱい落ちていて、それを探しに行ける、すごく資源が豊かな場所です。見つけられるものがいっぱいあることがまちの価値だと思うし、それに気付くことで毎日が楽しくなったとか刺激的だと言っている大学生やお母さんたちがいて、それがとてもいいなと思います。
私自身、社会人になって岐阜に戻ったときは、何もないと退屈に感じていた時期もありましたが、友達ができて誘われるがままに、散歩したり、お店に行ったりして一緒に過ごすうちに、何もないという考えは変わり、自分から出会うことに楽しみを感じるようになりました。
自分で探しても、人から紹介されたものの中からでも、自分のお気に入りを、みなさんにもぜひ見つけてほしいなと思います。

取材日 2021/9/29

 

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