風情ある町並みが残る、長良川沿いの湊町、玉井町、元浜町周辺のエリアを総称して呼ばれる川原町。そんな川原町を舞台に、まち歩きイベントを開催しました。
開始時刻の16時にはだんだんと日が沈み始め、あたりの明るさが少しずつ落ち着いていく中で、まち歩きがスタートしました。
今回の講師は、「ブラトガシ」でおなじみ岐阜大学名誉教授の富樫幸一さん。
川原町に精通する富樫さんならではの話に耳を傾けつつ、夕暮れから夜へと移り変わる雰囲気の変化を体感しながらまちを歩きました。

まず訪れたのは、2025年3月にオープンした「CASA stella」。
1階の「和傘CASA」では、ずらりと並んだ岐阜の伝統工芸品の岐阜和傘を眺めながら、和傘の歴史や制作工程、手入れ方法などを説明していただきました。川原町周辺は、長良川の水運を通じて和紙や竹などの和傘の材料が豊富に揃う地域であったため、岐阜和傘の産地として発展してきたといいます。手作業で丁寧に作られる岐阜和傘の制作工程を教えていただき、和傘職人のてしごとの素晴らしさが実感出来ました。
続いて2階の「OZEKI 川原町gallery」へ。ここには明治時代から続く株式会社オゼキの岐阜提灯が並んでおり、参加者はその幻想的な美しさに見惚れながら、歴史や制作背景について学びました。
新しい施設ということもあり、参加者からは「ここにあったんだ、来れて良かった!」という声も聞かれ、岐阜和傘と合わせて川原町で岐阜の伝統工芸に触れることができる機会となりました。

その後、夕方ならではの醍醐味である夕焼けをみんなで見る時間に。
夕方の長良橋から見る景色がとても綺麗だと富樫さんはいいます。
この日はあいにく夕陽を見られませんでしたが、明るい時間と夜のはじまりが重なる、この時間帯ならではの特別な魅力が感じられました。

川原町は古くから川湊として栄えてきましたが、水害の危険と隣り合わせでもある地域です。
過去の伊勢湾台風では大半の地域が浸水する被害を受けたことも。
そのため、川の恵みへの感謝と安全を祈願する川まつりが開催されたり、水に浸かってもいいように設計された場所があったりと、川辺に近い町ならではのお話をしていただきました。

17時を過ぎる頃には周辺は薄暗くなり、川原町の美しい景観がより引き立つ時間帯に。
川原町のまちづくりの背景には、地域住民の自主的な取り組みである「川原町まちづくり会」の活動が大きく関わっているといいます。
川原町まちづくり会では、地域らしさを守っていくための様々な活動を行っており、その一つに川原町らしいまちづくりを進めるための手作りのまちづくり協定があります。この取り組みによって、地域住民が安心して住みやすい環境を作るだけでなく、建物の用途や意匠などの景観面での最低限のルールを地域で共有することができているそうです。さらに、この協定に基づいて市と連携して無電柱化や道路の整備が進められたことで、伝統的な町並みが守られてきました。

川原町広場にある東屋。
窓枠越しの景色が絵画のように見えるそう。
まち歩き終盤ではあたりはもう真っ暗に。
川原町の町並みが統一され、落ち着いて綺麗に見えるのは、川原町まちづくり会で単に町並みを保全するためだけでなく、そこに住む人や訪れる人々が暮らしやすいようにするための、地域住民の協力や努力があったからこそだといいます。
たとえば、まちを照らす門灯や街灯は、今でこそ川原町の風情ある町並みには欠かせないものですが、門灯がなかった当時は夜の通りはかなり暗く、鵜飼観覧のために訪れた人が前に進めないほどだったそうです。
そこで、まちにふさわしい灯りについて川原町まちづくり会で話し合い、丸くて温かみのある色の門灯が採用されました。その後、地域住民の協力によって家々の前に門灯が設置され、現在の温かな光が照らされた統一感のある町並みが作られたと教えていただきました。

今回のまち歩きでは、川原町の歴史やまちづくりの背景を知るとともに、この時間帯ならではの雰囲気を楽しむことができました。そして、同じ場所でも、時が移ろえば違う風景になるということに改めて気づかされるまち歩きでした。
また、かつての商業活動の面影が残る町並みを舞台に、解説とともに格子窓や門灯の灯りなどをじっくり見ながら歩くことで、まちの成り立ちや歴史への理解が深まるイベントとなりました。
